あなたの組織では、どのように社員研修用のプログラムを作成していますか?
「社員研修プログラムをどう作成すれば良いか分からない」
「今までのやり方でいいのか不安」
「もっと効果的で受講者も満足できる研修を作りたい」
という悩みをお持ちの企業担当者もいらっしゃるかと思います。
このページでは、研修プログラムを作る際のポイント、具体的な作り方を徹底解説します。
新人研修プログラムなどの具体例、階層別のおすすめテーマなどもご紹介しますので、
ぜひ最後までご覧いただき、社員と企業双方の成長を実現するためのヒントを得て頂ければ幸いです。
研修プログラムを作るときに重要なのは、組織の成長戦略と連動した「人財育成」であるという明確な目的意識を持つことです。企業が目指す成長戦略の実現に向けて何を達成すべきかを明示し、社員1人ひとりのスキルアップと企業全体の成長の同時実現を目指します。
さらに、研修で得た知識やスキルを実際の業務でどのように活用すべきか、その道すじを示すことで、社員のモチベーションを高め、組織へのエンゲージメントを強化します。
このように、研修プログラムの質は組織全体の活性化と目標達成に貢献し、最終的には企業の持続的な成長へ直結します。社員研修プログラムの作成時は、折にふれて本来の目的を思い返すようにしましょう。
効果的な研修プログラムを設計するために押さえておきたい重要なポイントを5つ解説します。
新しい研修プログラムを設計する前に、まずは現状分析を行い、研修を実施する目的を明確にしましょう。現状分析では、今回の目標を達成するためにどのような課題が存在し、どのようなスキルや知識が社員に不足しているのかを分析します。人事評価データ、業務成績データ、アンケート調査結果などを活用し、データに基づいた客観的な評価を行います。研修を通じて解決したい課題を具体的に定義できたら、研修の対象者、期間、予算などの検討に入ります。
研修プログラムを作る際には、社員の階層や職種別に研修内容を整理しておくと良いです。こうすることで、これから行う研修が現行の研修内容と重複していないか、現行の研修プログラムに組み込んで実施すべきか、あるいは別で実施すべきか、どの階層・職種に必要なのか等を把握しやすくなります。分類の仕方は、階層、職種、研修テーマがわかる内容であればどのような形式でも大丈夫です。以下に簡易例を示しますので、実際に行っている研修プログラムを当てはめてイメージしてみてください。
| 全員 | 営業職 | 技術職 | 管理・事務職 | |
|---|---|---|---|---|
| 新入社員 (1年目〜3年目) |
新入社員研修 OJT |
基本研修(営業) | 基本研修(技術) | 基本研修(事務) |
| 中堅社員 (4年目~) |
OJT メンター研修 リーダーシップ研修 コーチング研修 |
スキルアップ研修(営業) | スキルアップ研修(技術) | スキルアップ研修(事務) |
| 管理職 | 経営戦略研修 マネジメント研修 コーチング研修 財務・会計研修 |
マネージャー研修(営業) | マネージャー研修(技術) | マネージャー研修(事務) |
| 全社員 | DX研修 ハラスメント研修 コンプライアンス研修 ワークライフバランス研修 |
|||
たとえば、全社的に使用する新しいシステムの導入に伴い、ITリテラシー研修を行う必要が出てきたとします。分類表をもとに、全社員向けの「DX研修」内に組み込んで全部署・全階層向けに実施し、以降は「新入社員研修」の一環として実施するといった発想が可能になります。
このように新たに研修プログラムの作成を考える際は、分類一覧表を用いて「現行の研修においてどこに位置するのか」を確認してからスタートすると無駄がなく設計できます。
研修プログラムを設計する上で、5W1H(Why, Who, Where, What, When, How)の視点を持つことは非常に重要です。研修の目的(Why)、対象者(Who)、内容(What)、時期(When)、場所(Where)、方法(How)を明確にしながら、順序立てて研修プログラムを構築していきます。このフレームワークを用いることで、研修の目的や方法が明確になり、受講者や講師、運営側すべてが納得する研修プログラムを構築することができます。詳細は次項「研修プログラムの作り方」で解説します。
OJTは新人の成長はもちろん、トレーナー役である先輩社員の成長も期待できます。
指導を通じて人材育成力やマネジメントスキルを磨くことができるため、組織全体のリーダーシップの質の向上や、将来的な管理職の育成にもつながります。
理論や知識を座学で学ぶだけでなく、実践的に学ぶことで研修の効果をさらに高めることができます。たとえば、ロールプレイング、グループワーク、ケーススタディなどを活用すると、受講者が主体的に学び、知識を定着させやすくなります。実践的なトレーニングを組み込むことで、受講者が学んだ内容をすぐに業務で活かせる設計を心がけましょう。
とは言え、すべてを実践トレーニングで行うことは効率的とは言えません。忙しい社員でも参加しやすいよう、時間と場所の柔軟性も考慮すべきです。すき間時間に学べるオンデマンド型コンテンツを提供したり、基本的な知識はeラーニングで事前に学習し、集合研修ではケーススタディやワークショップに取り組むなど、内容に合わせて研修方法を工夫することも効果的です。社員の働き方に配慮した研修スタイルは、参加率とモチベーションを高め、持続可能な研修プログラムにつながります。
それでは実際に、研修プログラムの作成をシミュレーションしてみましょう。
先程ご紹介した「5W1H」のフレームワークに沿って、6つのステップで研修プログラムを設計していきます。
なぜ今回の研修が必要なのか、その目的を明確にすることが第1ステップとなります。課題や目標を明確にすることで、実践的で成果に直結するプログラムを作成することができます。このとき、ゴールについては、数値目標を盛り込むなど、なるべく具体的で測定可能な内容にすることが望ましいです。研修プログラムの目的とゴールを明確にしたら、対象となる受講者に共有することも大切です。受講者のモチベーション向上にもつながり、研修後のフィードバックを行う際にもその効果が評価しやすくなります。
なぜこの研修が必要なのかを関係者全員が理解することが、研修成功のカギとなります。
次に、誰がこの研修の対象なのかを明確にします。新入社員、中堅社員、管理職といった階層別に、または、営業、エンジニア、管理部門といった職種別に、対象者を明確にします。対象者を明らかにすることによって、対象者のレベルや経験、ニーズを把握し、研修内容やレベルを適切に調整することができます。
対象者が決まったら、受講者がどの段階からどの段階へ成長することを目指すのかを定義します。現状のスキルレベルを評価し、“研修を通じてどのような状態を目指すのか”を設定することで、より具体的なプログラムを作成できます。
受講者に習得させる具体的なスキルや知識を決定します。研修の目的やゴール、受講者の職種に合わせて内容を精密にプランニングする必要があります。また、研修を受ける受講者のスキルレベルやニーズを事前に把握し、それに応じた内容を設計することが大切です。その上で、目標を達成するために必要な知識やスキルを、具体的なカリキュラムとして落とし込みましょう
研修を行う適切な時期を決定します。参加者のスケジュールや業務状況、繁忙期との兼ね合いを考慮し、最も効果的な期間を選びます。たとえば、年度初めの新入社員研修や、プロジェクト開始前の専門スキル強化研修など、タイミングを工夫することで、受講者の準備と集中を高めることが可能です。計画には、予備日や代替案も盛り込み、急なトラブルが発生した場合にも備えておくことが望ましいです。
研修の目的、対象者のレベル、予算などを考慮して、最適な研修形式を選んでいきます。オンラインやオフラインの選択肢も含め、柔軟に対応することが重要です。集合研修は受講者同士のコミュニケーションを促進し、一体感を醸成するのに適していますし、eラーニングは自分のペースで学習できるため、忙しい社員でも参加しやすい研修方法と言えます。それぞれの研修方法のメリットやデメリットについては次項「研修プログラムで用いる研修形式の選び方」で詳しく解説します。
研修形式には、集合研修やオンライン研修など、いくつか種類があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、適切な方法を選ぶことが求められます。また、複数の手法を組み合わせることで、受講者の学びや成長を促す効果的なプログラム作りも可能です。
ここでは各手法の特長を理解し、最適な方法を見極めるポイントをご紹介します
集合研修は、受講者同士の交流や即時フィードバックが得られる点で非常に有効な手法です。講師が直接指導し、グループワークやロールプレイングを通じて知識や経験を共有できるため、理論と実践のバランスを取りながらスキルアップを図ることが可能です。
一方で、会場や移動の手配、日程調整など運営面での負担が大きい点がデメリットとされています。また、受講者のスキルや経験に差がある場合、全員に最適な内容を提供するのが難しいという側面もあります。全体として、対面でのコミュニケーションを重視する研修では有力な選択肢ですが、事前の調整やフォローアップなどの工夫が求められます。
リアルタイム配信によるオンライン研修は、場所の制約を超えて受講者が参加できる点が大きな魅力です。自宅やオフィスから受講可能なため、交通費や時間を節約できます。また、参加⼈数の制約がなく、会場を準備する必要もないため、⼤規模研修も従来ほどの⼯数がかかりません。「集合研修では⼈の⽬が気になって⼿が挙げられなかったが、オンライン研修ならチャットで質問がしやすい」といった声もあり、対⾯研修に準じた教育を提供できる強みがあります。
一方で、対⾯研修では講師が受講者の表情や態度から理解度をくみ取りながら講義を進めることができましたが、オンライン研修では受講者の反応がわかりにくく、理解度把握や知識定着がむずかしいという問題もあります。また、ライブ配信のためのシステムを準備する必要がありますが、研修担当者・受講者双方が不慣れだったり、通信トラブルが起こった場合に研修がスムーズに実施できないケースもあります。受講者間の意見交換やディスカッションにも工夫が必要なため、どの研修プログラムをオンライン研修で実施するべきか、研修設計段階で綿密な計画が求められます。
eラーニングはいつでもどこでも学べるため、集合研修になかなか参加できなかった人にも学習機会を提供できます。同⼀教材で学べるため、研修品質の均一化が図れる点もメリットです。また、オンデマンド教材は何度でも繰り返し利⽤ができるため、イニシャルコストはかかりますが、⻑期的には費⽤を低く抑えることが⾒込めます。そのため、集合研修の事前教育や内定者向けの⼊社前教育をeラーニングで実施する企業も増えています。受講履歴をシステム上ですべて⼀括管理することができるため、運営面の負担が少なく、成績未達者のみ抽出して再受講を促す、といった対応もすぐにできます。
一方、学習者の自主性に依存するため、計画的な進捗管理ができないと挫折しやすいというリスクがあります。また、疑問点についてすぐに相談できる環境が不足していると、内容の定着度が低下する可能性があります。テクノロジーの活用が進む現代には必要不可欠な手法ですが、フォローアップ体制やモチベーション維持策も同時に検討する必要があります。
外部研修の最大のメリットは、専門的な知識やスキルを持つ講師から、質の高い研修を受けることができる点です。外部の専門家や業界の最新動向に直接触れることができるため、視野を広げたり、他社の受講者と交流することによる新たな人脈形成も期待できます。また、外部研修機関は、研修の企画から運営まで、すべてを代行してくれるため、自社の研修担当者は、研修の準備や運営に時間を割く必要がありません。
一方で、外部研修は費用が高額になりがちで、自社のニーズに完全に合致する研修プログラムを見つけることが難しい場合もあります。受講後の実務への落とし込み支援が不足していると、効果が半減する可能性があるため、受講後のフォローアップや社内での共有が不可欠です。
効果的な研修プログラムを設計するためには、対象者のレベルやニーズに合わせたテーマを選定することが重要です。
ここでは、新人社員、中堅社員、管理職という3つの対象者別に、おすすめの研修テーマを紹介します。
最後に、具体的な研修プログラムの例を紹介します。この表は、各研修プログラムについて、目的、テーマ、研修形式をまとめたものです。
| 名称 | 目的 | テーマ | 研修形式 |
|---|---|---|---|
| 新入社員向け ビジネスマナー研修 |
社会人としての基本的なマナーを習得し、 スムーズな社会人生活のスタートを支援する |
・第一印象の重要性 ・挨拶・言葉遣い・身だしなみ ・電話応対・メール作成 ・名刺交換・訪問時のマナー ・社内でのコミュニケーション |
eラーニング+集合研修 |
| 中堅社員向け リーダーシップ研修 |
チームをまとめ、目標達成に導くための リーダーシップスキルと意思決定力を習得する |
・リーダーシップの定義と種類 ・目標設定・計画立案 ・部下育成・モチベーション向上 ・コミュニケーション・コーチング ・問題解決・意思決定 |
オンライン研修+集合研修 オンライン研修+外部研修 |
| 管理職向け マネジメント研修 |
組織全体の目標達成に向け、 部下を育成・管理するマネジメントスキルを習得する |
・マネジメントの定義と役割 ・組織戦略・経営戦略 ・人材育成・評価制度 ・リスク管理・コンプライアンス ・組織改革・イノベーション |
集合研修 外部研修 |
| 全社員向け コンプライアンス研修 |
企業倫理、法令遵守、社会規範を理解し、 違反行為を未然に防ぎ、企業の信頼性を維持する。 |
・企業倫理、個人情報保護法 ・ハラスメント防止 ・情報セキュリティ ・インサイダー取引防止 ・反社会的勢力との関係遮断 |
eラーニング オンライン研修 |
| 全社員向け DX研修 |
DX(デジタルトランスフォーメーション)の基礎知識を 習得し、業務におけるデジタル技術の活用を促進する。 |
・DXの概要 ・AI・IoT・ビッグデータ等の デジタル技術の基礎知識 ・業務プロセスのデジタル化 ・データ分析と活用 ・デジタルツール活用事例 ・DX推進における課題と解決策 |
eラーニング+集合研修 オンライン研修+集合研修 外部研修 |
研修プログラムの作り方から具体的なプログラム例まで、実践的な情報を網羅的に解説しました。また、さまざまな研修形式を組み合わせて活用することで、研修の効果を最大限に引き出すことができることもお分かりいただけたかと思います。
ここでご紹介したメリット・デメリットや具体例を参考に、自社に適した柔軟なプログラム設計を検討していただければ幸いです。
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