【PRESIDENT×DK 特別連載】人の成長のカギは「コンフォートゾーンから抜け出し、修羅場体験を積む」にあり
人事部門は、人財育成に対してどう向き合えばいいか?

by プレジデントオンデマンド編集部
ジェネリック医薬品のトップメーカーとして、日本の医療を根底から支えるサワイグループホールディングス。医薬品業界は社会貢献性が高い一方、国内労働人口の減少や薬価制度など厳しいマクロ環境に直面する。そうしたなか、同社はなぜ「人財の確保と定着」を経営の最重要課題と位置づけるのか。そして、社員一人ひとりが「イキイキと働き、活気ある会社」を実現するために、どのような人事戦略を描いているのか。同社の人事担当役員、髙橋一郎さんに聞いた。

業界トップとして、「3000億円企業」を目指す

――サワイグループの人事部門では、自社の成長戦略に必須の人事課題として、「人財の確保」と「人財の定着」の2つを掲げられていますね。

サワイグループホールディングスが掲げる中期経営計画「Beyond 2027」には、2030年度までの明確なビジョンが示されています。それは、高品質かつ安価なジェネリック医薬品を安定供給することで、2030年には年間250億錠以上の生産能力を確保し、ジェネリック事業の売上収益を現在の約2000億円から3000億円に引き上げるという壮大な目標です。

私たちの使命は、日本の医療を支えることです。現在、処方箋の約9割がジェネリック医薬品に置き換わっており、多くの患者さんの健康を支えています。この責任を果たすため、生産能力の増強だけでなく、研究開発、品質保証、品質管理といった主要な業務領域のレベルアップが不可欠となります。そして、その基盤を支えるのが「人」です。

しかし、労働人口の減少や、安全性や有効性を確保するための法律の改訂および自主規制の強化など、さまざまな要因から、製薬業界全体で人材確保は厳しさを増しています。特に専門性の高い品質管理・品質保証を担う人材は、業界内での競争が激化しており、また生産を担う人材については、地域的な事情もあり人材確保が非常に難しくなっています。

髙橋一郎(たかはし・いちろう)
サワイグループホールディングス株式会社
執行役員
グループ人事部・グループ総務部・ブランドコミュニケーション部担当役員
グループ総務部長 ブランドコミュニケーション部長
1986年、新薬メーカーにMR(医薬情報担当者)として入社。営業人材開発部長、人事部長、理事などを歴任。2024年、サワイグループホールディングス入社。25年、執行役員就任。

採用ブランドを強化し、採用のミスマッチをなくす

人材確保の強化策として、当社が最も注力しているのが「採用ブランドの強化」です。人事部とブランドコミュニケーション部が連携し、社会貢献性の高い事業内容を積極的に発信しています。

説明会や面談の場では、事業内容や待遇といった情報だけでなく、当社の「社風」を理解してもらうことに注力しています。新卒採用では、若手社員がリクルーターとして学生と直接対話し、職場の雰囲気を肌で感じてもらいます。中途採用でも、複数の面接や社員との面談を通じて、入社後のミスマッチを最大限に減らすことを目指しています。

特に、中途採用ではダイレクトリクルーティングを強化し、グローバルな視点を持つ人材や、品質管理・研究開発といった専門性の高い人材を積極的に獲得しています。他社にはないユニークな取り組みとして、職場の雰囲気を伝える動画を作成し、サワイグループで働くことの魅力を伝える工夫も行っています。

採用のミスマッチは、会社にとっても個人にとっても時間の無駄です。だからこそ、当社に興味を持ってくださった方には、できるだけ深く会社を理解して納得していただいたうえで、選考に進んでほしいと考えています。離職率を引き下げるためには、採用の入り口からミスマッチをなくす取り組みを強化することが大事になります。

「ストレッチした目標」が社員を成長させる

――貴社は、魅力ある会社をイメージする言葉として、「従業員が『イキイキする』活気ある会社」を目標に掲げられています。
これは具体的に、どのような職場になりますか?

従業員がイキイキと働き、活気ある会社を当社が目指すのは、単にワーク・ライフ・バランスが取れている働きやすい環境を作るだけでなく、社員一人ひとりの成長を促すという強い意志が込められています。

当社では、従業員が各自の目標に「ストレッチ」した形で能力を発揮している状態こそが、「イキイキと活気がある」会社だと考えています。例えば、目標の100%達成ではなく、120%や130%の達成を目指すことで、人は成長します。それが会社の目標達成に繋がり、ひいては企業理念である「患者さんのため」の実現に繋がるのです。

このストレッチした目標を達成するため、当社の人事部門は、従業員が最大限に能力を発揮できる環境作りに注力しています。例えば、在宅勤務やリモートワークの選択肢拡大、そして健康経営の推進など、多岐にわたる施策を展開しています。

また、女性の活躍推進にも焦点を当て、部門長に占める女性の比率を10%以上、管理職の女性比率を15%以上にするという具体的な数値目標を設定し、積極的に取り組んでいます。男性の育児休業取得率100%を目指し、年間5日間の育児目的の休暇制度を新設するなど、性別に関わらず仕事と育児を両立できる環境も整備しています。

人財育成は「業務を通じて」成し遂げる

――貴社は「個を育て、個を活かす」という人事理念をお持ちです。人財教育についてのお考えをお聞かせください。

人の成長は、基本的に業務を通じて成し遂げられる、と当社は考えています。困難な課題に直面し、それを乗り越える「修羅場体験(試練)」こそが、人を成長させる最も重要な機会です。だからこそ、当社は従業員に、少し難しいプロジェクトをアサインしたり、ジョブローテーションによって新たな業務に挑戦したりする機会を与えることを重視していきます。

現在は、ローテーション制度はまだ活発ではありませんが、今後は30代後半から40代のマネージャー層を中心に、より積極的なジョブローテーションを推進していきたいと思います。大抵の仕事が分かり、活動量もあるこの年代が、一番伸びる時期だと考えているからです。仕事の面白さが広がるこの時期に新たなプロジェクトのアサインやジョブローテーションを経験することで、視野が広がり、スキルも向上します。もちろん、全く畑違いの部署に異動させるのではなく、本人の希望や適性、能力をしっかりと見極めたうえで、次なるストレッチした目標を与えることが重要です。

一方で、当社は社員の自己啓発を支援する、学びの制度も充実させています。例えば、オンライン講座の「Sawai Web School」※や、社外の研修に参加できる「Sawaiオープンスクール」など、多彩な学びの機会を提供しています。

オンライン講座や研修は、知識を得るために不可欠であり、先に述べた「業務を通じての成長」と共存するものだと考えています。また、研修に参加すれば、社内外の優秀な人材と接することで刺激や危機感となり、「自分は井の中の蛙だった」と気づくなど、さらなる成長への意欲にもつながります。つまり、業務での修羅場体験と、オンライン講座や研修による学びの機会の両方が必要不可欠なのです。

人事部の役割は仕組みづくり、育成は「上司」が担う

人事部の役割は、あくまで人材育成の「仕組みづくり」です。部下一人ひとりの成長に気づき、観察し、最適な業務や異動を采配するのは、常に一番近くで接している「上司」でなければなりません。人事部がすべてを管理しようとすると、かえって本質を見誤る可能性があります。

上司には、「この部下を3年でしっかり育てるんだ」という意識を持ってもらいたい。そして3~5年経って部下が成長したら、新たなフィールドで活躍する機会を与えてほしいと思います。優秀な部下を自分の部門に留めておきたい、という上司の気持ちも分かります。しかし、人財は会社全体の大切な資産。その成長のためには、手放す勇気も必要です。

最後に、社員の成長に関しては、最終的には個人の責任だと考えています。人事部門としては、「成長したい」と願う人たちに、最大限の機会と支援を提供したいと思っています。一方で、従業員一人ひとりにも、日々怠らず自己研鑽に励む姿勢を求めたいです。コンフォートゾーン(心地よい場所)に留まり、現状に満足するのではなく、自ら課題を発見し、その解決に果敢に挑戦する。そうした従業員一人ひとりの「意志」こそが、サワイグループの未来を拓く力になると信じています。

※「Sawai Web School」:株式会社デジタル・ナレッジが手掛ける、社員のオンライン研修サービス。人事部主体で導入され、わずか1年でのべ1万人が利用するなど全社的に活用が進んでいる。


株式会社プレジデント社は、2025年4月より、企業の経営課題解決と人材育成を支援する、法人対応の定額制動画学習サービス「プレジデントオンデマンド学び放題」を、国内初のeラーニングソリューション企業である株式会社デジタル・ナレッジと共に提供しています。
人的資本経営への需要が急速に高まる今、デジタル・ナレッジ社のサービス活用による研修のDX化をはじめ、「人財育成」に力を入れる各企業の取り組みを、特別連載として紹介していきます。

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