少子高齢化、若者の県外流出、そして深刻な人材不足――。こうした状況は秋田県に限らず、多くの地域が直面している課題です。これらの課題を背景に、秋田大学は“産官学金言”連携の枠組みで、秋田県全域を対象としたリカレント教育の取り組みをスタートさせました。
今回は、2025年11月に本格始動した地域連携型リカレント教育の狙いと、その取り組みを支えるLMSの役割について、秋田大学の工藤様にお話を伺いました。

地方創生・研究推進課 総務・運営統括担当 (左から)
主査 一関 翼 様、主査 工藤和昭 様、総括主査 毛利淳子 様、主査 佐々木香保里 様
導入前の課題
- 産官学金言連携を機能させる統合型学習基盤が必要
- 広域にわたる県内全域で、地域間格差のないオンライン学習環境の整備
- 学習成果を可視化するデジタルバッジの導入
導入サービス
導入後の成果
- オンプレミス環境で、多機関が利用可能な学習用LMSを構築
- 講座・教材・受講者情報を一元管理し、運用負担を軽減
- オーサリング機能とデジタルバッジで、“学びの質向上”と“成果の可視化”を実現
- 2025年11月より、秋田県内の社会人向けリカレント教育を本格運用
【目次】
地域課題から始まったリカレント教育――“産官学金言”が連携する仕組みとは
まず、今回のリカレント教育とはどのような取り組みなのでしょうか。
秋田県全域を対象に地域産業の振興と人材育成を促進するための取り組みで、「秋田リカレント教育プラットフォーム(通称AREP)」と呼ばれています。
最大の特長は、“産官学金言”の連携体制を取っている点です。産業界・行政・大学による従来の産官学連携にとどまらず、金融機関、そしてメディアまでが一体となって、地域全体で人材育成に取り組む仕組みを構築しています。

この取り組みの背景にはどのような課題がありましたか。
やはり大きいのは、少子高齢化と若者人材の都市部や県外への流出です。それに伴って、県内企業では後継者不足やDX人材不足が深刻化しています。
限られた人員で事業を維持・発展させていくためには、業務効率化や労働生産性の向上が欠かせません。大学として、こうした課題に対して何ができるのかを考えたとき、これまで培ってきた教育力を生かし、他機関と連携しながら、社会人が学び直せる環境をつくる必要があると考えました。
AIやデータサイエンスなどのスキルを社会人が身につけることで、業務効率や生産性を高め、結果として地域産業の活性化につながることを目指しています。
秋田大学は、この取り組みの中でどのような役割を担っているのでしょうか。
秋田大学はプラットフォームの中心的な存在として全体を取りまとめ、プログラムの質を継続的にブラッシュアップしています。募集サイト「あきたリカレントLab ONE! 」の開発も手掛けており、単に講座を提供するだけでなく、持続可能なプラットフォームとして機能させることを重視しています。
秋田という地域で実施するリカレント教育ならではの難しさはありますか。
秋田県内は中小企業が中心なので、リカレント教育に割ける人的・経済的余裕が限られているという声があります。
また、県北・県央・県南と三つの地域があり、それぞれ地理や気候、歴史文化が異なるため、地域間格差が生じないような設計が必要でした。

「学びの質」と「成果の見える化」をどう支えるか――KnowledgeDeliver採用の理由
リカレント学習用のLMS導入にあたり、どのような点を重視されましたか。
まず、先ほど挙げたような地域間格差が生じないことを意識しました。
そのうえで、受講者がいつでもどこでも学習できる利便性、多機関との連携のしやすさ、コンテンツを一元管理できること、再利用や更新がしやすいことも重視しました。行政や企業がすでに実施している公開講座や研修プログラムもありますので、それらを集約し、効果的に活用できる仕組みが必要でした。
入札案件として、最終的にKnowledgeDeliverを採用された決め手を教えてください。
大きく三つあります。
第一に、多様な形式の教材に対応できる点です。
これにより各機関が持つ研修コンテンツや講座を、無理なく集約・活用することが可能になりました。
第二に、教育効果の高いオンライン教材を作成できる点です。
単なる動画配信ではなく、字幕を入れたり、途中に確認クイズを入れたりと、学習者の理解を深める工夫ができるオーサリング機能を評価しました。オンライン講座はどうしても質にばらつきが出やすいため、こうした機能の充実は重要でした。
第三に、デジタルバッジに対応している点です。
せっかく学んでも、その成果を評価・共有できる仕組みがなければ、受講者のモチベーションは維持しづらいと思います。今回のリカレント教育では、当初から学習成果を「見える化」できるデジタルバッジの導入を想定していましたので、それが発行可能であった点も大きな決め手となりました。
産官学金言連携を“機能させる”運用設計の工夫
現在の運用状況について教えてください。
2025年11月から講座提供を開始し、現在、LMSを活用したものとしては6講座、受講者も着々と増えてきている状況です。
主に秋田県内の社会人の方々を対象に、DXに特化した講座をはじめ、単なる座学にとどまらない実務に即した実践的なプログラムを提供しています。期間も長期から短期まで幅広く、多様な講座を展開している点が特長です。
講座の提供や受講者管理はどのように行われていますか。
受講募集は「あきたリカレントLab ONE! 」で行い、学習はLMSで行っています。秋田大学がLMS上にクラスを作成し、各機関がコンテンツを登録する形です。受講者のユーザー登録や管理は、秋田大学で一元的に実施しています。
オンプレミス環境での構築はいかがでしたか。
大学内の情報系部署とのやり取りでは、専門外の部分も多く、当初は意図がうまく伝わらないこともありました。ですが、その都度デジタル・ナレッジさんに迅速に対応いただき、「どこまでが大学で、どこからが情報部署か」といった役割整理をしていただいたことが非常に助かりました。
産官学金言という多様な関係者が関わる中で、特に意識されたのは何でしょうか。
共有すべき部分と、そうでない部分をきちんと分けることです。
LMSではロール(権限)を設定し、外部の方にも見せて良いもの、受講者だけが見られる情報などを切り分けて、使いやすいように工夫しています。
多機関連携を前提にした設計は特にこだわったポイントであり、大学が中心となって産官学金言一体のプラットフォームを構築できたことは、大きな成果だと思います。
デジタルバッジが拓く、秋田発リカレント教育の次章
今後の取り組みの方向性をお聞かせください。
コンテンツが充実してくれば、各機関の専門性を掛け合わせた新たなプログラム展開が可能になります。LMSとしてもそうした展開がしやすい設計になっていますので、連携の可能性をさらに広げていきたいですね。
デジタルバッジはどのように活用していきたいですか。
学歴や資格では測れないスキルや経験を可視化できるのが、デジタルバッジの大きな強みです。将来的には企業内評価や人材定着、さらには産業活性化へとつなげていきたいですね。産官学金言が連携するプラットフォームだからこそ、学びの成果を地域全体で活かすことができるのではないかと期待しています。
改めて、産官学金言連携型のリカレント教育を実現するための重要なポイントは何でしょうか。
各機関の強みを生かした役割分担と、相互に補完し合う仕組みだと思います。
産業界のニーズ、大学の教育力、金融機関のマッチング、メディアの発信が組み合わさることで、地域活性化の好循環が生まれるのではないでしょうか。
最後に、同様の取り組みを検討している大学や自治体へのメッセージをお願いします。
人口減少や産業構造の変化は、多くの地域に共通する課題です。
大学と地域が手を取り合い、人材育成に取り組み、その成果を地域に還元していくことは、今後ますます重要になると感じていますし、その中でデジタルバッジは重要な鍵を握ると考えています。
私たちとしてもまだ始まったばかりの取り組みですが、着実に前へ進めていきたいと考えています。
【デジタル・ナレッジからみた本事例のポイント】
これまでにない産官学金言連携のリカレント事業ということで、各所の担当者様が苦労せず利用できるよう、シンプルなKnowledgeDeliverをオンプレミスで実装させていただきました。
秋田県内各所からの質の良い教育コンテンツと共に、今後の秋田の発展に貢献できるよう、微力ながら支援させていただきます。
《文教ソリューション事業部 シニアコーディネータ 松村香菜》
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お客様情報
| 名称 | 国立大学法人 秋田大学 |
|---|---|
| 創立・大学設置 | 昭和24年(1949年) |
| 本部所在地 | 秋田県秋田市手形学園町1-1 |
