外務省が実施した「海外進出日系企業実態調査」によると、平成29年10月1日時点で海外に進出している日系企業の総数(拠点数)は7万5,531拠点となり、前年比約5.2%増の過去最多を更新(*1)したことが明らかとなりました。グローバル競争が加速するビジネスシーンでは恒久的な人材不足が叫ばれ、人材開発ニーズは益々高まっています。そんななか、豊富なリソースとノウハウを生かし国内外の企業のグローバル人材育成を強力に支援しているのが、今回ご紹介するサイコム・ブレインズ株式会社様です。事業の概要や近年の企業研修トレンド、海外の動向、今後の展望などをお伺いしました。

① グローバル人材育成を強力に支援
御社が展開されている主な教育研修事業についてお聞かせください。とくに強みとされている分野は何でしょうか?
ひとつは、グローバル人材育成です。日系企業の海外駐在員や現地スタッフを含めた教育研修、サポート支援、異文化対応などを行っています。もうひとつは、管理職やリーダー向け研修、営業向け研修です。経営リーダーの育成や営業力強化プログラムなどにおいて豊富な実績・ノウハウを有しております。弊社は単なる研修の提供に留まらず、顧客企業の業績向上やグローバル戦略の加速化のためのトータルのラーニングデザイン、継続的なタレントマネジメントの提供を行っております。
近年、注力されているテーマや取り組みは?
ICTを最大限に活用した教育研修とデジタルラーニングの連携を積極的に進めています。集合研修前に動画で事前研修を行う「反転学習」については、数年前から提供を始め、今や多くの企業で導入されています。また、ICT化で様々なデータが取れるようになりますので、集合研修も含めたデータの収集・分析にも取り組んでいます。そうした流れの中で、必須となるシステムの部分にデジタル・ナレッジ社のLMSを使わせてもらっている状況です。
② 海外でもLMS活用、ネットワーク課題も克服し安定稼働へ
弊社の「KnowledgeDeliver」(以下、KD)というLMSをご利用いただいていますが、使い勝手はいかがでしょうか?
思った以上によくできていますね。デジタルラーニングに関しては、どれだけたくさんのデータが取れるかが重要ですが、KDは取れるデータが細かく、より詳しい分析が可能です。従来と比べ倍以上の厚みの研修報告書を顧客企業にお渡しすると、「ここまで分かるのか」と喜ばれます。デジタル・ナレッジさんはeラーニング業界で我々と同じくらい長くやってこられたプレイヤー。実績もあるし、安心感があります。
海外でも弊社のLMSをご利用いただいていますが、海外展開の際に留意された点などありましたか?
最大の懸念はネットワークでした。“ネットワークが不安定でコンテンツが配信できない”というようなことがあれば死活問題ですから、しっかりとしたCDN(Contents Delivery Network)を組んでもらえること、これが必須条件でした。デジタル・ナレッジでは、中国ではトップレベルである、アリババ社傘下のアリババクラウドCDNを採用されています。また、中国以外ではAkamaiのCDNを採用されており、いずれも安定してコンテンツ配信ができています。
ほかに海外展開の難しさを挙げるとすれば何でしょうか?
教育研修に関する価値観の違いでしょうか。日本人は、どちらかといえば斜に構えている人が多いでしょう。「忙しいのに研修なんて」と。ところが、海外では、「会社のお金で自分のスキルを上げてくれるなんて嬉しい」という感覚です。つまり、教育プログラムが充実しているかどうかが会社選びの重要な要素となります。ただ、教育を受けてスキルを習得したらほかの会社に転職してしまう。そこが難しいところです。
昨今の企業研修のトレンドについてはどのように見ていらっしゃいますか?国内と海外でのLMS活用の違いなどについてはいかがでしょう?
海外では、いわゆる一般的なeラーニング研修という形での利用が意外と多いです。一部で反転学習が取り入れられていますが、まだ初歩段階です。日本と大きく違うのは“スマホ受講”の多さですね。スマホの普及率が日本より高いため、研修もスマホ受講が一般的です。一方、国内では、相当な数の研修がほぼ反転学習化されています。さらに、事前に細かいテストやアンケートを入れるなど反転部分が進化してきている印象です。それから、研修後のアフターフォローも充実してきています。弊社ではこれらの部分に、今注目されているマイクロラーニングが活用できると考えています。
③ “マイクロラーニング”が切り拓く新しい人材育成
マイクロラーニングといえば、5~10分程度の短いコンテンツで学習するスタイルですが、なぜ今注目されているのでしょうか。また今後どのような方向に進んでいきそうですか?
マイクロラーニングは2017年の米国ATD International Conference&EXPOにてもっとも注目を集めた新しい教育手法です。もともとはインフォーマル・ラーニング(*2)の一環ですが、それがますますインフォーマル化すると同時にライブラリ化していくと考えられます。つまり、これまでのようにプログラム化され一方的に提供される教育研修ではなく、ライブラリの中から一人ひとりが自らの学びたいものを自由に選んで学ぶという、能動的な学習を促す流れになっていくのではないでしょうか。
単なるコンテンツの短縮化ではなく、マイクロラーニングが学びそのものに変化をもたらす可能性があると?
マイクロラーニングとは手法の集合体であって、共通しているのは「小さいコンテンツであること」、そして「それを使うことで人のパフォーマンスを上げるための手法」だと括ることができます。
みなさん仕事中にわからないことをネットで調べたりしますよね? あるアンケートでは、約7割の人が仕事にGoogle検索を使っているという結果が出ているそうです。ただ、もっと細かい、業務に直結した知識やスキルはGoogleの中にはありません。それはできれば、社内に欲しいですよね。ラーニングというより業務支援に近い形だと思いますが、業務マニュアル自体もどんどんデジタル化され、ライブラリ化していくでしょう。
社内にある様々な情報がマイクロコンテンツ化され、ライブラリ化され、それを自由に検索して自分で学ぶというのが近い将来の人材育成になり得るわけですね。
情報だけでなく、スキルや暗黙知的なノウハウも含まれていくかもしれません。たとえば、「今日は大事な商談だがお客さんが感情型の方である。そういった方に接するときの最初のひと言は一体何か?」、それをクイズでシミュレーションしていく、といった具合です。AIを取り込めばより面白いものができるかもしれませんね。クイズって、実は教育にすごくいいんですよ。
クイズ、ですか?
従来は、講義を受けたりテキストを読んだりすることが学習でした。でも、本来、ヒューマンスキルは頭で覚えることではありませんから、クイズを先にやって間違えたところを重点的に学んだ方が効果的なんです。間違いで気付きを促したら、詳しい解説で学びを深めます。「あなたはここができていませんね」「正しくはこうですよ」と人からフィードバックを受けるのは、従来OJTの役割。そこをクイズに変えると面白いですよ。
OJTをeラーニング化しようとするとクイズになると?
そうです。集合研修で学んだことを現場で実践できているかどうかチェックが必要ですが、そのチェックをクイズで行うわけです。クイズでは研修で触れてないような事例も混ぜて考えさせます。応用編ですね。なぜなら、現場はすべて応用だからです。「想定外の事態発生、さぁどうする?」ということを常に考えさせ、研修で学んだことを定着させます。ここにもマイクロラーニングが適用可能です。
マイクロラーニングが広がる一方、課題はありますか?
もっと手軽にスマホ受講ができる環境を整えていきたいですね。今はPCでの受講がほとんどですから、まずPCを立ち上げ、「新着クイズが公開されました」というメールのURLをクリックし、システムにログインする……受講前のステップが多すぎますよね。スマホのプッシュ通知で新着クイズがいち早くわかるとか、アプリ化してバッチが付くようにするとか、もっと手軽なのがいい。マイクロラーニングに特化したLMSを、ぜひデジタル・ナレッジさんに早く作って頂きたいですね。

マイクロラーニング型最新学習ツール「Business Masters」
(*1)外務省「海外在留邦人数・進出日系企業数の調査結果(平成30年要約版)」
外務省 報道発表,2018年(最終閲覧日:2018年6月20日)
(*2)インフォーマル・ラーニング……プログラム化された研修や講習、セミナーなどの「フォーマル・ラーニング(公式な学習)」に対し、「インフォーマル・ラーニング(非公式な学習)」とは個人による学習全般を指す。企画立案のために検索エンジン等で情報収集したり、業務でわからない点を上司に質問したり、社員同士が意見交換をしたりすることも含まれる。自発的な意思がその動機となる。
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お客様情報
名称 | サイコム・ブレインズ株式会社(CICOM BRAINS Inc.) |
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発足 | 1996年 ※2008年にサイコム・インターナショナルとブレインズが合併 |
本社 | 東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル7F |