【新春イベントレポート】 教育ビッグデータ・ラーニングアナリティクスの“市場価値”と“5つの課題”


2016年1月21日、新春イベント『教育ビッグデータが導く新時代~学習行動の分析・活用で広がる未来~』を開催致しました。

ゲストスピーカーは、教育データ解析研究の第一人者である早稲田大学教授 松居辰則氏と、教育ビッグデータ・ラーニングアナリティクス(LA)分野で先進的な研究をされている上智大学教授、学習分析学会理事長の田村恭久氏。今注目を集める『教育ビッグデータ』『ラーニングアナリティクス』を実際の教育現場でどのように導入・活用すべきか、その市場価値や解決すべき課題など、様々な角度からお話を伺いました。

写真:デジタル・ナレッジ代表取締役社長 はが

「教育ビッグデータ・ラーニングアナリティクスとは、学習履歴データ、行動履歴データを蓄積して可視化し、集計分析して自動化することで、よりよい学習環境を実現するためのテクノロジーである」という定義のもと、その価値や用途を解説するデジタル・ナレッジ代表取締役社長 はが。

注目される理由~教育ビッグデータ・ラーニングアナリティクスで何ができるのか?~

まず初めに、こちらは上智大学の田村教授が研究を進めている学習分析の一例です。

写真:スライド

横軸が授業時間、縦軸が授業スライドのページ、太線が教員の説明しているページ遷移、細線が学生の見ているページ遷移を示しています。
ここから何が読み取れるのでしょうか?

写真:田村先生

「結論から言うと、学生は私の話しているスライドを見ていないことが分かった(笑)」と田村先生。
「ただし、先生が話しているページを素直に見ている学生の成績が優秀かというと、実は相関がないということも分かってきた」というのです。

こういった具合に、今まで我々の持っていた価値観が崩れてしまうようなデータがエビデンスベースで多数出てきており、大変注目を集めています。

学習履歴データといえば、従来は学習システムへのログイン時間や学習時間などLMS(Learning Management System)で取得できるようないわば“粒度の粗いデータ”を指すことが一般的でした。
しかしながら今後は、前述したような閲覧ページ遷移や視線、キーボードやデジタルペンからの入力情報、授業映像や音声の解析など、普段何気なく行っている行動データ=“粒度の細かいデータ”を取得できるようになったことで、これまで不可能だった学習評価、学習支援、学習環境デザインの実現の可能性が期待できるということでした。

写真:早稲田大学 松居教授

「粒度の細かいデータ、さらには学習時の心拍・血圧・発汗といった“生体計測データ”にも非常に注目している」と話す早稲田大学の松居教授。

「ラーニングアナリティクス、何に使いますか?」

教育ビッグデータ・ラーニングアナリティクスは学習評価や学習支援だけに留まらず、教員分析や学校分析、教材評価などへのエビデンスとしても用いることも可能です。実際、ラーニングアナリティクスに興味をお持ちの学校様の中には、その使用目的に「FD(ファカルティ・デベロップメント)※1」を挙げられるケースもあるとの事でした。

写真:

「ラーニングアナリティクスのパワーはまずは学習者へフィードバックされますが、近い将来、先生の評価や本当にその教え方が良いのかといったことにも波及していくと考えられます」教育現場における市場観をご紹介するデジタル・ナレッジ取締役COOの吉田。

教育ビッグデータの実用化に向けて~活用例と4つのフェーズ~

では実際に、教育ビッグデータを活用したゴールイメージを見てみましょう。

写真:教育ビッグデータを活用したゴールイメージ

リアルな授業におけるクリッカーでの発言、eラーニングでの勉強、質問――こうしたあらゆる学習・行動履歴をすべて収集・蓄積し、分析・自動処理することで、例えば「ドロップアウト予兆(退学者予兆)」を行うことが可能であるという例をご紹介しました。

実は教育ビッグデータの活用~実用化には4つのフェーズが存在します。

  • ①収集/蓄積

  • ②履歴可視化

  • ④集計/分析

  • ⑤自動化

デジタル・ナレッジは、①~④までをカバーする2つの製品――教育ビッグデータ統合プラットフォーム(LRS)『KnowledgeRecorder(ナレッジレコーダー)』とLearning Analytics総合サービス『Analytics+(アナリティクスプラス)』――にて、あらゆる学習・行動履歴の収集・蓄積から可視化、分析、さらにはロボットによるドロップアウト予兆、アダプティブやレコメンドの自動化などを実現、教育ビッグデータ実用化のサポートをすでにスタートしています。

とくに『KnowledgeRecorder』はイベント当日にリリースされたばかりの製品とあって、イベント終了後にも多数のお問い合わせを頂きました。

製品・サービス

解決すべき5つの課題

ラーニングアナリティクスを行うにあたって留意すべき点、そして今後の課題とは?5つにまとめました。

  • ①「とにかく何でもいいからデータを取得すれば良い」という考え方は×。学習の対象、目的に合わせ、まずは一貫した“デザインの戦略”が必要。

  • ②日中は学校授業、午後は塾で映像学習、夜は自宅でeラーニング――こうした時間・場所・環境が異なるデータを一貫して扱えるよう、あらゆる学習・行動履歴をすべて収集・蓄積した“統合学習履歴”が必要。

  • ③分析結果の99%はゴミである。その中から、意味のある分析結果を見出すことが重要。1%を見極める理論と経験に裏打ちされた熟練した目利きが求められる。

  • ④教育ビッグデータの実用化がここ数年で一気に進むことが予想される。そうしたなか、膨大なデータをしっかりと解析しハンドリングできるプロフェッショナルな人材が求められる。人材育成が課題。

  • ⑤個人情報の取り扱いは非常にセンシティブな問題であるが、ラーニングアナリティクス分野においてもデータが非常に取りにくいという側面がある。技術的・理論的には可能でも、実際に学習履歴データ・行動履歴データを取得できるのか、それをどう扱うべきなのか、きっちりと議論する必要がある。

②に関しましては、前述の教育ビッグデータ統合プラットフォーム(LRS)『KnowledgeRecorder』にてすでに実現が可能です。

⑤に関しましては、現時点では学習履歴に関する公的なガイドラインや法整備は為されていません。そこでデジタル・ナレッジでは「学習履歴活用推進機構」を立ち上げ、教育事業者の皆様にとってひとつの目安となる『学習履歴の利活用に関するガイドライン』を自主的にまとめました。コピーフリーですので、ぜひご活用ください。

学習履歴の利活用に関するガイドライン

まだまだ始まったばかりの教育ビッグデータ・ラーニングアナリティクス。
今後は第二弾、第三弾のイベントも開催予定です。ぜひご期待ください!

登壇者紹介

写真:松居 辰則 氏

早稲田大学 人間科学学術院 人間情報科学科 教授

松居 辰則 氏

写真:田村 恭久 氏

上智大学 理工学部 情報理工学科 教授

NPO法人 学習分析学会 理事長

ICT Connect 21 技術標準化WG 座長

田村 恭久 氏

学習分析学会

※1 FD(ファカルティ・デベロップメント)……大学教員が授業の内容や方法を改善し向上させるための組織的な取り組みの総称。2008年度以降、大学はそれを実施することが義務付けられている。


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