iPadを活用した学習の効果検証報告書

2011年6月発行


1.調査概要

eラーニング戦略研究所は『電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会(※)』と共同で、専門スクールデジタルハリウッドのWebデザイナー養成クラスの受講生32名に対してアンケートを行い、従来の紙テキストを使用した通常クラスと、iPadによる電子テキスト・映像教材を使用したクラスとの比較調査を実施し、iPadを活用した学習の効果検証を行いました。(有効回答数32)

その結果、一定の授業内容について、iPad利用クラスの85%が「大いに理解できた」「理解できた」と回答。これは通常クラスの約2倍にあたる結果となりました。また、理解度テストの結果からもiPadクラスの平均点が高いことがわかり、高得点者と低得点者の幅が通常クラスより小さく、クラス全体の理解度が平均して高い「底上げ効果」が見られました。理解度を高める要素としては、 ①移動中などの時間にiPad教材を有効活用することで予習・復習頻度が上がる ②予習・復習にiPad教材を利用することで理解度が上がるの2点が確認されました。

その他にも、両クラスにおける予習・復習方法や頻度の違い、予習・復習を行う場所の違い、電子テキスト・映像教材に対する受講生の要望から見える問題点などが注目されるアンケート結果となっています。

グラフィック基礎 理解度チェックテスト結果
テスト結果平均

年度別平均

(※)電子書籍を活用した教育スタイル創造研究会
eラーニングソリューションベンダーの株式会社デジタル・ナレッジ、大学・大学院やクリエイター養成スクールを運営するデジタルハリウッド株式会社、DTP、Web、CG・映像関連などデジタルクリエイションに関する雑誌・書籍を発行する株式会社ボーンデジタル、株式会社ワークスコーポレーションの4社で発足した研究会。教育機関でiPadなどのメディア端末と電子書籍を『デジタル教材』として活用することで得られる効果と課題、解決策の共有を行いながら、電子書籍を活用した新しい教育スタイルを創造するための研究を行っています。


2.回答者属性

アンケート調査概要

調査期間 2011年4月6日(土)~4月17日(日)
調査方法 アンケート画面URL送信によるWebアンケート方式
調査対象 ソフトバンクモバイル株式会社(機材提供、アンケート採取等)
・iPad利用クラス 13名   ・通常クラス① 11名   ・通常クラス② 8名

理解度テスト実施概要

調査期間 2011年1月30日(日)~5月21日(土)
調査方法 通常授業終了後の理解度テスト
調査協力 デジタルハリウッド株式会社
調査対象 専門スクールデジタルハリウッドのWebデザイナー養成クラスの受講生32名
・iPad利用クラス 13名   ・通常クラス① 11名   ・通常クラス② 8名

iPad利用クラスとは

従来の紙テキストに加え、iPadを活用した電子テキストや映像授業を使用して学ぶクラスです。
iPad教材は予習・復習でのみ使用し、通常授業では従来と同じく講師から直接指導を受けます。

  • 在籍中、iPadとWiFiスポットを無償で貸与。いつでもどこでも学ぶことが可能。
  • IllustratorやPhotoshopなどの基本ソフトや基礎スキルはiPad教材を活用し自分のペースで繰り返し学習可能。
  • 通学授業は表現力を伸ばす、課題作品の講評など、応用力を業界の現役講師からしっかり指導。
【前提条件】配布教材とiPadの利用場所

男女内訳

年代別内訳


3.サマリ

iPadを利用した電子テキストは
学習において有効であるといえる

  1. 場所を選ばず予習・復習時間が創出できる
  2. 予習・復習時間創出により理解度が高まる
  3. 電子テキスト・映像教材での学習により理解度が高まる
  4. 電子テキスト・映像教材への受講生満足度も高い

4.アンケート結果にみるポイント

iPadクラスの予習・復習率は100%
「場所を選ばず学習できる強み」が予習復習に高い効果

授業の前後に予習・復習を実施したかどうか尋ねたところ、iPadクラスは全員が予習・復習を実施したと回答。「毎回予習した/ほぼ毎回予習した」があわせて7割を超え、復習についても「毎回復習した/ほぼ毎回復習した」があわせて6割を超えた。一方、通常クラスは「予習をまったくしなかった/たまにした」が9割、復習にいたっては、全員が「復習をまったくしなかった/たまにした」と答えた。1週間あたりの平均予習時間については、通常クラスの平均2時間/週に対し、iPadクラスは平均4.1時間/週で、iPadクラスの受講生の方が予習に2倍の時間をかけていることもわかった。

予習・復習を実施した場所については、通常クラスでは自宅か学校という回答がほとんどだったが、iPadクラスでは自宅のほか「出勤・通学時等の移動中」「職場」といった回答が目立った。また、iPadクラスの受講生が予習を行う際には、紙テキストや補講ビデオではなく、iPadの電子テキストや映像教材を活用している人が多いことが明らかとなった。

これらの結果から、iPadクラスの受講生はiPadを活用し、移動中等の時間を有効活用して学習を行うことで、予習・復習率が高いことが明らかとなった。


クラス全体の理解度が高いiPadクラス
そのカギは「予習・復習の頻度」×「iPad教材利用」

復習について「毎回した/ほぼ毎回した」と回答したiPadクラスの受講生は、全員が「学習内容を大いに理解できた/理解できた」と回答、「理解できなかった」と答えた受講生は0だった。一方、「たまに復習した」と回答した通常クラスの受講生は、その半数が「学習内容を理解できなかった/どちらともいえない」と回答。予習についても同様の傾向が見られ、予習・復習頻度が高いほど、受講生の理解度が高いことがわかった。

また、「予習・復習にiPad教材を利用した」と回答したiPadクラスの受講生は、半数以上が「学習内容を大いに理解できた/理解できた」と回答し、iPadを利用しなかった通常クラスの受講生に比べ理解度が高いことがわかった。

実際に、グラフィック基礎(Illustrator/Photoshop/Fireworks)の授業内容をどのくらい理解できたか尋ねたところ、iPadクラスの85%が理解できたと回答。これは通常クラスに比べ約2倍多い結果だった。

また、理解度テストの結果からも、iPadクラスは通常クラスと比べて設問ごとの正解率が安定していて問題別の理解度のばらつきが少なかった。高得点者と低得点者の幅も通常クラスより小さく、クラス全体の理解度が平均して高いことが明らかとなった。

これらの結果から、予習・復習頻度が高いほど、受講生の理解度が高いことがわかり、電子テキストや映像教材などのiPad教材を利用した受講生ほど、理解度が高いことが明らかとなった。


iPadを活用した学習の満足度は85%
操作面の安定化や映像クオリティに改善の余地か

iPadの電子テキストを活用した学習については、「最新の電子端末を活用できる上、持ち運びも楽」「ネットで検索したり予習動画も見られて良かった」と85%の受講生から高い満足度が得られた。電子テキストの操作についても8割以上が「慣れた」「やや慣れた」と答え、年代による操作理解度の差異は見られず、比較的誰でもスムーズに使いこなせることがわかった。
また、iPadの映像教材についても、「実習動画がわかりやすい」「テキストを読むより早く理解できる」と高い評価を得た。

しかしながら、「電子テキストの文字は拡大するとぼやけて読みにくくなり、結局紙テキストを見ることになってしまった」「電子テキストが安定して開けないことがあり、今までめくっていたページが記憶されず最初のページに戻ってしまったりすることがあり、どこまで学習を進めたのか探すのが大変だった」「映像教材の画質の改善を希望」といった意見もあり、さらなる改善が必要といえる。

一方で、通常クラスの受講生の半数以上がiPadによる電子書籍、映像教材に興味が持っていることもわかった。これは、紙テキストの重さ・持ち運びのしにくさへの不満や、電子書籍等を活用した学習への期待感が背景にあるものと考えられる。

今後は、紙テキストのスリム化や、より高い学習効果を出すための紙テキストと電子テキストの使用バランスの見極め、電子テキストの操作性や映像教材の画質のさらなる改善に期待したい。


5.アンケート調査結果

予習・復習【全クラスに質問】

Q1


設問授業の前後に予習もしくは復習は行いましたか

結果iPad利用クラスは、全員が予習・復習を実施している

Q2


設問一週間あたりの平均予習時間、平均復習時間をそれぞれお答えください

結果iPad利用クラスは、通常クラスと比較して2倍の予習時間

Q3


設問どこで予習(復習)しましたか。当てはまるものすべてお答えください

結果iPad利用クラスは移動中及び職場等場所を選ばず学習できる

Q4


設問どの教材を使って予習(復習)しましたか。当てはまるものすべてお答えください

結果iPadテキストは、予習において活用度が高い

考察1. 復習時間に差が出なかった理由


1. 通常クラス受講生は、1回あたりの復習時間が長い

2. 通常暮らす受講生は、自宅や学校といった固定された場所での復習が多い


考察結果iPad利用クラスの受講生は電子テキストを利用し、移動中などの時間を有効活用して復習を行うことができた

理解度【全クラスに質問】

Q5


設問グラフィック基礎(Illustrator/Photoshop/Fireworks)の授業を受けて、どのくらい理解できましたか

結果iPadテキストを使用したクラスの85%が理解できたと回答(理解できたの回答した生徒は2倍多い)

グラフィック基礎・理解度チェックテスト結果


結果iPadクラスは通常クラスと比べ、設問ごとの正解率が安定しておりクラス全体の理解度が平均して高い
考察2. 理解度を高める要素とは


iPad学習の満足度【iPad利用クラスのみに質問】

Q6


設問iPadの電子テキストを活用した学習はいかがでしたか

結果満足度は85%と高いものの、電子テキストのみになる不安はある

Q7


設問iPadの電子テキストの操作には慣れましたか

結果電子テキストの操作は84%が慣れてきている。操作性については年代によるばらつきはない

Q8


設問予習や復習でiPadの映像教材を利用しましたか(利用した方へ:映像素材はいかがでしたか)

結果映像教材利用者は100%満足をしている(実習動画のわかりやすさが好評)

Q9


設問iPadを利用していない他のクラスの生徒さんへ、どの程度iPadの電子テキスト及び映像教材の利用をおすすめしますか

結果80%以上の推奨意向あり、電子テキストについては推奨意向が強い

電子テキストと映像教材に対するご意見・要望(抜粋)

iPadテキストの文字は拡大するとぼやけて読みにくくなり、結局テキストを見ることになってしまった

iPadの電子テキストが安定して開けないことがあり、今までめくっていたページが記憶されず最初のページに戻ってしまったりすることがあり、どこまで学習を進めたのか探すのが大変だった

授業内容によってはiPadではなく、直接書き込めるテキストタイプの学習の方がやりやすかった

電子媒体は長時間見ていると疲れる

映像教材の画質の改善を希望

途中で映像が止まってしまうことがあった

(iPadは返却しなければならなかかったため)最終的に手元に残るのは紙テキストなので、両方あった方がいい

個人的には紙のテキストの方が好きなのでなくならないでほしい


iPad学習への興味【通常クラスのみに質問】

Q10


設問
もし今お持ちのテキストがiPadで電子書籍として使えるとしたら利用したいですか。また、IllustratorやPhotoshop等の操作方法がiPadの映像で学習できるとしたら利用したいですか

結果半数以上がiPadによる電子書籍、映像教材に興味がる


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