行うべき理由や導入のポイントを解説!
デジタル技術の急速な進化に伴い、あらゆる組織においてDX推進が必要不可欠となっています。
そのなかでDX研修は、企業がデジタル時代における成功を目指すうえで欠かせない取り組みです。
このページでは、DXを進めていく上での課題やDX人材の在り方を踏まえ、DX研修の重要性や成功させるためのポイント、実際の進め方について解説していきます。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ITの浸透によってイノベーションを実現し、社会をより良い方向に変化させていくことを意味します。
それでは、企業におけるDX推進の意義とは何でしょうか?
企業がDXによって目指すべきものは、デジタル技術やデータの利活用によって、製品やサービス、ビジネスモデル、さらには企業の組織風土・文化までをも変革することです。その影響は、単なる業務効率化やコスト削減にとどまらず、売り上げ拡大や競争優位性の確立につながります。
つまり、企業におけるDX推進とは、デジタルテクノロジの活用によってビジネスモデルや企業文化そのものを大きく変革し、競争上の優位を確立することを目的としています。
すでに、DX化により既存のビジネスモデルを変革させ、急成長を遂げた世界的企業も出てきていますが、企業規模に関わらず、こうした取り組みなしに今後の事業拡大は見込めません。あらゆる企業で、さらには行政機関においてもDX推進が求められています。
DX推進のためには高度なデジタル人材が必要不可欠です。しかしながら、急速なデジタル化によってデジタル人材の需要が高まる一方、供給が追いついていません。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が発行する「DX白書2023」によると、DX人材が不足していると回答した国内企業は83.5%(2022年度)に達しています。このうち「大幅に不足している」は49.6%と半数近くに上ります。この数値はアメリカと比較しても極めて高く、人材不足はDXを推進する上での大きな課題となっています。
経済産業省も、2030年には最大で約80万人規模でDX人材が不足するという試算を公表しています。このようにDX人材の確保、育成が急務となるなか、社内でDX人材を育成する取り組みを進める企業が増えています。
出典 : 独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」 (2024年4月25日参照)
ところで、先程から出てくる「DX人材」とは、具体的にどのような人材を指すのでしょうか?
DX人材とは、デジタル技術を用いてビジネスの変革を推進することができる人材のことです。そのため、専門的な技術や知識だけでなく、ビジネスに関する深い理解やコミュニケーション能力、問題解決能力も必要とされます。また、デジタルテクノロジは急速に進化しているため、常に新しいスキルや知識を学び、成長し続ける意欲や柔軟性も必要です。
これらは一般的なDX人材の定義となりますが、DX推進状況や業界・業種によっても求められる知識やスキルは異なってくるため、企業はまず、自社にどんなDX人材が必要なのかを定義する必要があります。
DX人材に求められる役割とスキルについて、もう少し詳しく見ていきたいと思います。ここでは具体的に5つ挙げて解説します。
DX人材には、デジタル技術やツールに関する高度なスキルが必要です。例えば、プログラミング言語の知識、クラウドコンピューティング、ビッグデータ処理、人工知能(AI)、機械学習などが含まれます。これらのスキルを習得することで、DXプロジェクトの実装や改善をリードすることが期待されます
DX推進において、課題を解決するための取り組みは必要不可欠です。そのためDX人材には、複雑な問題を理解し、創造的かつ効果的な解決策を提案する能力が求められます。さまざまなデータや情報を分析し、ビジネス上の課題を明確に把握し、効果的な戦略を立てることが重要です。
DXプロジェクトは、複数の部門やチームが関与する社内、あるいは社外横断的な取り組みになります。そのためDX人材には、異なるステークホルダーやチームメンバーと円滑にコミュニケーションを図る能力が求められます。チーム力を高め、プロジェクトの目標を達成するために必要な協力関係を築くこともDX人材に求められる役割です。
DX人材には、ビジネスに関する深い理解と洞察力が求められます。デジタル技術やイノベーションを組織の目標や戦略にどのように結びつけるかを理解し、提案する能力が必要です。また、市場や競合状況、顧客ニーズなどのビジネス環境に関する情報を継続的に収集し、分析する役割も担います。
デジタルテクノロジやビジネスを取り巻く環境は急速に進化しているため、DX人材には常に新しい技術や手法を学び、変化する状況に対応する柔軟性と適応能力が求められます。また、失敗から学び、フィードバックを受け入れる意欲や姿勢を持つことも必要です。
このように見てみると、高度な専門知識が必要とされるのはごく一部であり、ほとんどは従来のビジネスシーンでも必要とされてきたスキルや能力の発展版であることがわかります。つまり、DXスキルとは特定の人に限られたものではなく、すべての人材が身につけるべきもので、一部の特別な人がスキルを習得するだけではDX人材の確保には足りないといえます。
そこで改めて重要となってくるのが「DX研修」です。
DX人材不足の現状を受け、社内でDX人材を育成する企業が増えています。
企業内でDX研修が必要な理由は主に3つあります。
DX化を進めていく上で最も重要なのは、全従業員が一定以上のデジタルリテラシーを持つことです。
企業におけるDX推進とは、デジタルの活用によってビジネスモデルや企業文化を変革し、競争優位性を確立することが目的です。そのためには、一部の社員がDXスキルを習得しただけではDX人材の十分な確保にはつながりません。全従業員がDX研修でデジタルツールの使い方や基礎知識を学び、全員が共通の理解を持つことがDX推進の第一歩となります。
DXを推進する過程においては、どうしても特定の人材や部門にノウハウや知識が集中しがちです。
しかしながら、個人に依存した体制はDX推進において大きなリスクとなります。企業内で行うDX研修は、ノウハウを組織全体に広め、知識の属人化を防ぐ重要な手段です。知識やスキルを共有し、標準化することにより、ブラックボックス化を回避し、持続可能なDXの推進体制を構築できます。
デジタル技術は日進月歩で進化しており、企業は生き残りをかけた競争にさらされています。
こうした変化に対応するためには、常に新しい技術や手法を取り入れ、それを業務に応用できるスキルを持つ必要があります。DX研修を実施することで、社員のスキルをアップデートし、変化に強い組織を築くことができます。
DX研修は、組織内のメンバーに対してDXに関する知識やスキルを習得させるための教育プログラムです。
実際にDX研修を実施する場合、具体的にどのような知識・スキルの習得を目指せばよいのでしょうか。
経済産業省は2022年、DX推進における人材確保・育成の指針として「デジタルスキル標準」を公開しています。
デジタルスキル標準は、以下の2つで構成されています。
それぞれについて解説していきます。
DXリテラシー標準は、すべてのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルです。
社員1人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることがねらいです。そのため、対象は全社員で、デジタル技術に対する基本的な知識、デジタルツールやデバイスの使い方などを学びます。
DXリテラシー標準は、「Why」「What」「How」「マインド・スタンス」の4項目で定義されています。
出典 : 経済産業省「デジタルスキル標準」 (2025年1月29日参照)
それぞれの学習ゴールと、主な学習項目例をまとめました。
学習のゴール | 学習項目例 | |
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Why | 人々が重視する価値や社会・経済の環境がどのように変化しているか知っており、DXの重要性を理解している |
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What | DXの手段としてのデータやデジタル技術に関する最新の情報を知ったうえで、その発展の背景への知識を深めることができる |
|
How | データ・デジタル技術の活用事例を理解し、その実現のための基本的なツールの利用方法を身につけた上で、留意点などを踏まえて実際に業務に利用できる |
|
マインド・スタンス | 社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要なマインド・スタンスを知り、自身の行動を振り返ることができるようになる |
|
Whatは、仕事で活用するかどうかにかかわらず、知識として持っておきたい項目です。
一方、Howは、仕事で利用するための知識・スキルで、 実際に業務上の作業や判断において利用してほしい項目となっています。
DX推進スキル標準は、「DXを推進する人材の役割」や「習得すべきスキル」を定義したものです。
DX推進においては、各社がDXを通じて何をしたいのかというビジョン、戦略を描いた上で、実現に向けてどのような人材の確保・育成が必要になるかを、適切に設定することが重要ですが、「DX推進スキル標準」はそのための参考となります。
DX推進スキル標準では、DX推進において必要となる人材のうち、主な人材を「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」の5つに分類しています。
出典 : 経済産業省「デジタルスキル標準」 (2025年1月29日参照)
さらに、1つの人材類型の中に2~4つの「ロール」を定義し、多様な組織・企業においてDX を推進する際の役割分担の違いに合わせた柔軟な使い方を提言しています。
「DX推進スキル標準」では、各ロールに求められるスキル・知識を大枠で定義し、育成に必要な教育・研修を把握するための学習項目例を明記しています。この「学習項目例」を、DXの推進に必要な人材を育成するための教育・研修等と関連付けることが可能です。
出典 : 経済産業省「デジタルスキル標準」 (2025年1月29日参照)
また、全人材類型に共通する「共通スキルリスト」は、DXを推進する人材に求められるスキルを5つのカテゴリー、12のサブカテゴリ―に整理して公開されています。
ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
参考 : 経済産業省「デジタルスキル標準」 P.83~
ここからは、効果的なDX研修を実施するために留意しておきたいポイントや、取り組み前の注意点をご紹介します。
DX研修を円滑に進めるためには、組織全体を巻き込んだ取り組みが必要不可欠で、非常に大きなパワーを要します。そのため、決定権がある経営層が我関せずでは、プロジェクトはうまくいきません。経営トップがDX推進を企業方針として定め、主体的にDX研修を進めることが肝要です。必要に応じてDXを推進するための部門を設置するなど、組織体制の整備もポイントとなります。
DX研修を効果的に実施するためには、最初に組織のDX戦略や目標を明確に定義することが重要です。デジタルテクノロジの活用によって、どの事業分野でどのような価値の創出を目指すか、そのためにどのようなビジネスモデルを構築すべきか、経営戦略やビジョンを明確に提示します。経営層を含む全社でDXを理解し、概念・言語の共通化を図ることもその一歩となります。
次に必要なのは、DX活動において自社がどのレベルなのかを把握することです。レベルを把握したうえで、自社が目指すDX 人材に必要なスキルは何か、どんな研修を設計すべきか、どういった DX リテラシーを醸成すべきかを選定していきます。事前に、DXリテラシーやスキルを可視化するアセスメントサービスを利用して現状を数値化するというアプローチも効果的です。
DX研修の対象はIT技術者だけではなく、全社員ですが、なかには「DX研修は一部のデジタル人材向けで自分には関係ない」と、取り組みに消極的な社員がいるケースも見受けられます。とくに中小企業では、デジタル技術の導入や活用が遅れているケースが多く、DXによって業務のプロセスが激変することに不安や抵抗感が大きい傾向があります。前向きに取り組んでもらえるよう、DX研修の意義や社員側のメリットもしっかり説明し、受け手の当事者意識を醸成したうえで納得感をもって進めることがDX研修の成功につながります。
上記のポイントを押さえたうえで、具体的なDX研修の進め方を「事前準備」「実施」「評価」の3フェーズで確認していきましょう。
社内のニーズや課題を把握し、どのような DX 人材を育成したいのか、どこまでのリテラシーレベルまで育成するのかといった目標設定を行います。ゴールイメージをしっかりと設計しておくことで、自社にとって本当に必要なDX研修を実施できます。
次に、目標に合った講師やプログラム、教材を選定します。研修会社によっては、ヒアリングを行い自社課題に沿った研修設計をしてくれるところもあります。自社に適した研修設計になっているか、参加者にとって意義ある内容となっているか、検証しながら進めます。
研修プログラムは普遍的な内容であればあるほど、受講者側のモチベーションは低下します。実際の業務やプロジェクトに活かせるような実践的な内容を取り入れることが重要です。具体的な業務に沿ったリアルなケーススタディなど、自社に合わせてプログラムのカスタイマイズを行うことで、理解を深めやすく、より効果的な研修が実現できます。
プログラムが決まったら、運用計画に進みます。研修のスケジュールや参加者の選定、会場の手配など、具体的な実施計画に落とし込みます。
効果的なDX推進のため、最初に実施するのが全社的なリテラシー研修です。対象が全社員になるため、リテラシー教育ではe ラーニングを活用して効率的に研修を進めるのが一般的です。リテラシー研修の実施後、ポテンシャルやスキル習熟度をアセスメントして、次の専門スキル研修に進む社員を選抜する場合もあります。
次に必要なのは、DXを推進する際に必要な専門スキルや実践力の習得です。例えば、プログラミング言語の学習、データ分析の手法やツールの習得、プロジェクト管理のスキル向上などが含まれます。実務に即したトレーニングやプロジェクトベースの学習を通じて、実際の業務に役立てられるスキルの獲得を目指します。
研修プログラムを実施した後は、フィードバックを受けて効果を定期的に評価し、継続的な改善に生かすことが重要です。参加者の意見や感想をもとにプログラムの改善点を洗い出し、次回以降の研修の質向上につなげます。
研修でインプットした内容を実践に生かせてはじめてDX研修の意味があります。学んだ内容を実務へ適用・活用できるよう、フォローアップやコーチングを提供し、社員の成長を継続的に支援しましょう。
DX研修の実施には、社員が業務にあわせて自分のペースで効率的に学べるeラーニングの活用が最適です。
全社的な展開となるDX研修では、企業が社員の学習進捗を把握しておく必要があります。eラーニングに使われるLMS(Learning Management System:学習管理システム)なら、社員1人ひとりの学習進捗や理解度、獲得スキルを可視化できるため、それに基づいた適切なフォローやフィードバックを通じて、効果的なDX研修を実現することが可能です。
eラーニングを活用したDX研修の実施を検討されている方、自社にあったより効果的な導入をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
今後、DX⼈材の確保はますます困難になると予想されます。
そのため、大手企業だけでなく、中小企業にとってもDX研修が当たり前となる時代がやってくるのは確実です。
DX研修は、企業でイノベーションを生み出す基盤をつくり、組織全体がDXに向けて一体となって取り組むために欠かせないものです。
この機会にぜひ自社の課題を洗い出し、DX研修の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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