大阪大学 数理・データ科学教育研究センター(MMDS)
産学連携で高度なデータ活用人材を育成!社会的課題に応える先進的な取り組みと、それを支えるeラーニング

政府が2019年に発表した「AI戦略2019」。すべての大学・高専生が初級レベルの数理・データサイエンス・AIスキルを習得することが目標の1つに掲げられています。同時に、社会のあらゆる場面でDX化が進むいま、産業界においても高度データ関連活用人材の育成は喫緊の課題です。こうしたなか、学生や社会人向けの教育にいち早く取り組んでこられたのが、大阪大学が2015年に設立した数理・データ科学教育研究センター(MMDS)です。2017年度には文部科学省による共通政策課題の全国6拠点の1つに選定されるなど高い評価を受けるMMDS。その先進的な取り組みとその中でeラーニングの果たす役割について、副センター長である鈴木貴特任教授にお話を伺いました。

大阪大学 数理・データ科学教育研究センター(MMDS)

大阪大学 数理・データ科学教育研究センター(MMDS)

特任教授/副センター長(モデリング部門,数理科学ユニット) 鈴木 貴様
事務補佐員 牧野恭子様

※一時的にマスクを外して撮影しております。

当初のお客様のニーズ

  • 複数の大学において共通コンテンツを利用できるプラットフォームを探している。

MMDSにおけるeラーニング活用の成果

  • MMDSの複数の取り組みにおいて横断的にeラーニングシステム(KnowledgeDeliver)を活用。
  • 動画コンテンツ作成サービス、ストリーミングサーバー(Video+)も活用し、これまで100以上の科目を内製、のべ2000人以上の学生や社会人にプログラムを提供。
  • 学部教育や社会人教育を行ううえで欠かせない基幹システムとなっている。
  • 豊富なeラーニングコンテンツを活かし有料のリカレントコースを運営できるようになったことで、国の補助金に頼らない自立的な運営が可能となった。

MMDSの取り組みが政府肝入り政策のモデルケースに抜擢

最初にMMDSの概要をお聞かせください。どのような目的で設立されましたか?

鈴木様:MMDSは、前身である金融・保険教育研究センターにモデリング部門とデータ科学部門を加えた新たな教育研究センターとして、2015年10月に発足しました。文理融合型の人材輩出を目的として、「金融・保険」「数理モデル」「データ科学」の3領域にわたる大学院向け講義を全学学生向けに公開し、履修コースを充実させてきました。
当初は大阪大学の一部局として発足したMMDSですが、政府の方針によって転機をむかえたのが2017年です。文部科学省による共通政策課題「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」において、大阪大学は北海道大学、東京大学、滋賀大学、京都大学、九州大学と並ぶ全国6拠点の1つに選定され、新しい枠組みの中で取り組みを深化させていくことになります。

高度データ活用人材育成の必要性が叫ばれるなか、全学的な教育研究組織のモデルの1つにMMDSが取り上げられた、ということですね。

鈴木様:はい。さらに共通政策課題事業が全国展開を進め、多数の大学が参加を表明するなかで、本学は近畿ブロックと中国・四国ブロックにおいて拠点校という役割を担い、教材開発、教員の育成などあらゆる面から周辺大学をサポートしていくこととなりました。外部企業・機関とも連携し、国内外で高まる高度データ関連活用人材の需要に応えるべく、日々取り組んでおります。

<MMDSの主な取り組み>

この多岐にわたるMMDSの活動のなかでeラーニングを活用されているのはどの部分でしょうか?

鈴木様:主にDuEXとHRAMの2つです。
DuEX(デュー)はMMDSが中心になって立ち上げたデータ関連人材育成関西地区コンソーシアムで、高い潜在能力を持つ大学院博士後期課程学生や博士研究員(ポスドク)に対し、データ関連知識・スキルを習得できる文理融合型教育プログラムを提供しています。


DuEXは2017年に文部科学省の「データ関連人材育成プログラム」の対象機関の1つに採択されている。

鈴木様:DuEX提供コースのうちAコース(データサイエンス基礎)とCコース(医療データ基礎実践)でeラーニングを使っています。Aコースの5単位はeラーニングだけで修了可能です。

コース内のオンラインの部分を弊社のeラーニングシステム『KnowledgeDeliver』で提供されているということですね。

鈴木様:その通りです。協定校である神戸大学、滋賀大学、和歌山大学、奈良先端科学技術大学院大学、大阪府立大学、大阪市立大学の学生は無料で受講できます。この6大学と本学でデータサイエンス科目を相互に受講できる単位互換協定を結んでおり、各大学で開発したeラーニングコンテンツを互いに共有し活用しているといったプログラムになります。

産業界の期待に応え、eラーニングを活用したリカレントコースを開始

もう1つのeラーニング活用先であるHRAMはどんな組織ですか。

鈴木様一般社団法人 数理人材育成協会HRAM(フラム)は、社会人向けにわかりやすいカリキュラムや教材を作ってほしいという厚生労働省事業での要望も受け2019年に設立したものです。こちらは有料会員制でDuEXとの連携コースのほか、リカレントコースを運営しています。初級・AI・入門・基礎・応用の5つのコースがあり、大半がeラーニングコンテンツです。


データサイエンス基礎コース・応用コース紹介動画


データサイエンス初級コース紹介動画

どういった方が受講されていますか?

鈴木様:製造業や建設業の方、製薬会社、大学にお勤めの方などさまざまです。職種としては技術者はもちろん、マネジメントや総務の方もけっこういらっしゃいますね。社会人向けのプログラムですが、学生さんも比較的多く受講されています。

応用コース(eラーニング+スクーリング)の受講者のコメント

  • データサイエンスに関する幅広い内容で業務に活かせる知識の習得ができたと感じています。曖昧な知識であったことも明確にすることができ、満足しております。
  • ビデオ教材をいつでも視聴することができ、Webベースで受講者のやり易い環境に合わせることができるため、仕事のペースに合わせて勉強できました。
  • e-Learningが質及び量ともに充実しており、メンターの先生方とデータサイエンス手法について議論できる機会もあり良かったです。
  • グループワークでは異業種の方々と活発な議論ができ、刺激的で充実した時間でした。
  • 社員の教育メソッドの一つとして検討したいと思います。

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MMDSの活動におけるeラーニングの意義とは

リカレント教育を行う上でどのようなことが課題となっていますか。

鈴木様:まず、社会人が大学や研究室にアクセスすること自体が難しいですよね。社会人になってからドクターを取るのはすごく大変で4年位平気でかかりますし、そこに飛び込もうとするような優秀な人材はなかなか会社が離さないでしょう。

それは日本特有の問題なのでしょうか。

鈴木様:日本では社会人が研究室に受け入れてもらうという仕組みや制度がほとんどありません。かといって、企業同士が協力して何かしらの団体を作ろうとなっても、そこでの活動内容はシェアしなければなりませんから当然差別化は難しい。企業は他社と差別化して競争力をつけたいと思っていますからね。ここに大きなハードルがあります。本当の意味でイノベーション創出や競争力強化につなげるためには、従来のやり方にとらわれずに同業者と協力するなど産業界全体で取り組むことが必要ではないでしょうか。

MMSD

今そういう流れはきていますか?

鈴木様:いえ、まだまだ競争の流れですね。ですからMMDSのような横断的な取り組みが必要なんです。
MMDSでは、今年度から産業界を巻き込んだ数理・データサイエンス・AIのエキスパート人材育成事業をスタートさせました。社会人を含む受講生をどんどん受け入れ、データサイエンスを活用した研究を支援します。企業と本学の連携研究室とを結びつけ「産業のイノベーション」と「学問の活性化」を同時にやろうという取り組みです。

将来の日本の中核を担う人材の誕生が期待されますね。e ラーニングはMMDSにどのような成果をもたらしましたか。

鈴木様MMDSにとってeラーニングは必要不可欠です。我々の教員数、そして対象学生の数から考えてもKnowledgeDeliverがなかったら学部教育も社会人教育もまず実現できなかったでしょう。これまで100以上の科目を作成し、のべ2000人以上の学生や社会人にプログラムを提供してきましたが、とくに社会人にとっては、あれだけの数の専門的なeラーニングコンテンツがあるということは非常に魅力的なものになっていると思います。スマホで受講できる点も好評です。
さらにいうと、DuEX については文部科学省の補助金が昨年度で切れましたので、残り3年間を自走しなければなりません。そんななか、HRAMで eラーニングコンテンツを使ったコースを運営できるようになったことでMMDSとして自立的な運営ができるようになったことは大きな意味がありました。

横断的にeラーニングシステムを活用、次に目指すは“自動化”

MMSD

最初にeラーニングを導入されたきっかけは何でしたか。

鈴木様:DuEXを発足する際、協定校間で共通のコンテンツを利用する仕組みが必要となりましたが、各校が別々に運用しているLMSに相互乗り入れするのは難しかったため、共通プラットフォームとしてLMSを備えたeラーニングシステムを導入することになりました。

システム選定のポイントは何でしたか?

鈴木様:導入当時は運用方法やコストが未知でしたので、学外のクラウドで運用できることを重視しました。また動画コンテンツはもちろん、パワーポイントやPDFファイルの運用が可能なものを考慮しました。

弊社のKnowledgeDeliverを採用された決め手をお聞かせください。

鈴木様:上記のポイントをクリアしていた点と、導入当時はまだ動画コンテンツ作成に不慣れな教員が多かったため、動画コンテンツ作成機能が付いている点が便利だと判断しました。今でもこの機能で動画コンテンツを作ったりしています。また、動画コンテンツを運用するためのストリーミングサーバー(Video+)が利用できる点も良かったと聞いています。複数の取り組みで横断的に使用できる点も便利でした。DuEXとHRAMは入口こそ異なりますが同じシステム(KnowledgeDeliver)につながっています。

eラーニングを運営されるうえで大変な部分はありますか?

鈴木様:MMDSの現状としてやはり教材開発に手を取られています。教員は全然足りませんし、スタッフも限られた人数で全学の学生管理からカリキュラム開発、単位認定、修了証の発行までしないといけません。これはeラーニングだけではなく他の教務システムも含めての話ですが、とにかく業務まわりの細々としたことはどんどん自動化しないとやっていけないというのが現状です。

たとえば修了証の発行の自動化などですね。

鈴木様:あらかじめ修了基準を設定しておき、クリアすれば勝手にPDFの修了証を発行してくれる自動化を今デジタル・ナレッジさんにやってもらっています。これが実現すると非常に助かりますね。
専門家でなくてもリテラシーがなくても、誰もがパッと使えて恩恵を受けられる、そういうシステムがこれから主流になると思います。「物凄くよくできたシステムだけどあの名人が使ってはじめて力を発揮する」ではもう古い。誰もが予備知識なく使えてある程度は自動でやってくれるというのが、まさに我々の教育が目指す未来像でもあります。

ドラえもんのどこでもドアが現実のものに? 魅力的なウェビナーを多数開催

鈴木様:もう1つeラーニングシステムのお世話になっているところがありました。AI・データ利活用研究会です。オンラインでの研究会(ウェビナー)を定期的に開催しています。

これは誰でも受けられますか?

鈴木様:会員登録をすれば誰でも受けられます。登録さえしておけば事前に参加予約をする必要もなく、興味のある内容のときだけ自由に見ることができますので、我々にとっても参加者にとってもすごく便利です。

このウェビナーはコロナ禍に始められたものですか?

牧野様:最初は会場で開催していたんです。2019年ですからコロナの前でしたね。
鈴木様:そうそう、たしか2020年の夏にはオンラインに切り替えたかな。ちょうどデジタル・ナレッジさんからKnowledgeDeliverとZoomの連携ができるようになったという話を聞いて、すぐに導入しました。

Zoom連携カスタマイズをさせていただいたんですね。

鈴木様:eラーニングシステム(KnowledgeDeliver)を通してZoomのウェビナーに入ることができるんですよ。ウェビナーって一般公開だと総会っぽくなっちゃうでしょう?でもこれなら会員向けに閉じた状態でウェビナーが開催できます。一度講演に参加した方には次の開催案内が自動的に流れますので、時間がある方、興味のある方は勝手に参加してくれます。我々としてはほぼ負担がなく、どんどん積み重ねて開催できるという仕組みです。これはとてもいいシステムだし、大いに活用しています。

講演内容を拝見すると面白そうな内容ばかりですね。初心者にもとっつきやすそうな印象です。

鈴木様:先日は「avatarin(アバターイン)」というANAから生まれたスタートアップ企業さんの講演でした。テーマは瞬間移動サービス、イメージとしてはドラえもんのどこでもドアをアバターロボットを使って実現するという話ですごく面白かったです。参加者からの質問タイムがまた楽しいんですよ。講義は1時間でその後の1時間はみんなでディスカッションするんですが、参加者の方もチャットにどんどん入ってきて盛り上がります。講演者もすごく喜ばれてね、楽しかったとお帰りになります。金曜日の18時から不定期開催していますので、興味のある方はぜひ参加してみてください。

全く足りない高度データ関連人材、社会的課題に応えるために

産業界では高度データ関連人材のニーズはますます高まっていますか。

鈴木様:企業側の要望としてはもうどんどんエスカレートしていますよね。専門人材が欲しい!と。全然足りませんし、やらないと競争に負けてしまいますから非常にニーズがあると思います。
ただし、優秀な人材をよそから連れてきたって企業文化に馴染まなきゃダメなんですね。なぜならこれまで外注しても失敗ばかりだったから。一緒に仕事できるかどうかが重要なんです。だからこそ企業は社員に学ばせようとし始めています。

そういった意味では、リカレントコースを提供するHRAMの役割がますます重要となっていきそうですね。

鈴木様:この豊富なeラーニング教材を武器にどうやって社会人を広く呼び込むか、なにかやり方を考えなければなりません。ひとつは、企業が利用したくなるような付加価値を提供したいと考えています。たとえば、企業の人事の方に自社の社員の学習状況を確認できる管理権限を提供するという取り組みは好評でした。個人で受けられる方もいますが、会社毎にまとまって受講される方も増えていますので、そういった層もたくさん取り込んでいきたいですね。

改めて今後の抱負をお聞かせください。

鈴木様:MMDSの活動としては教員も教材もプログラムもまだまだ足りないのが現状です。eラーニング教材はたしかに充実してきましたが、それはいわゆる教科書のようなもの。ただ学生に見せて終わりと言う訳にはいきません。企業毎にその活用方法だって千差万別ですからね。この宝の山を使ってどんな教育プログラムを提供し、どう実践研究をすすめていくか、それがまさに問われていると思いますので、これからもしっかりと取り組み地域と社会に貢献していきたいと考えております。



ご利用いただいた製品・サービス

・DKクラウド
・AMSオプション
・データ連携カスタマイズ(DuEXとHRAMの連携)
・Zoom連携カスタマイズ
・成績判定、修了証出力カスタマイズ
・動画コンテンツ作成サービス

お客様情報

名称 大阪大学 数理・データ科学教育研修センター(MMDS)
設立 2015年10月1日
事務局所在地 大阪府豊中市待兼山町1-3 大阪大学 豊中キャンパス内 基礎工学研究科I棟 101B号室

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