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eラーニング戦略研究所
e-Learning Strategies Institute

様々な業界・分野でのeラーニングと教育ICTの新たな活用方法を提言します。

90年代から始まったeラーニングは、今、「普及期」を経て「発展期」に入ったとみています。

もともとは遠隔教育の実現や、リアル教育を代替あるいは補完するものとして活用されていましたが、現在はeラーニング前提だから実現できる教育や、様々な業界や分野に特化したトレーニングの実現例が多数生まれています。

多くの社会課題を背景とする企業活動・行政活動の新たな課題解決手段として、eラーニングや教育ICTはどのような活用方法があるのでしょうか。新しい時代に相応しいeラーニング用途の提言を行って参ります。

まるまると教育ICTロゴ

eラーニング戦略研究所からの提言

eラーニング戦略研究所では、新しい時代に相応しいeラーニング・教育ICTについて活用提言を発信しています。
これからのeラーニング・教育ICTは、効率や利便性向上にとどまらず、多くの課題解決とともに新しい価値を創造するものと私たちは確信しています。

No.1コンビニ・外食等での外国語研修での活用提言

AIを使った「日本語接客話法アウトプット・トレーニング」

2018/3/01
eラーニング戦略研究所
所長 青木 秀


■外国人スタッフ登用に伴い接客トレーニングが課題に

 ファストフード店で商品が提供されるトレーにはクルー(アルバイトスタッフ)募集の告知チラシが挟まっている。ロードサイドのファミリーレストランでは、国道に開かれたガラス面には「アルバイト募集」の文字が張り出されている。ファストファッション店では、商品とともに封入されるチラシはアルバイト応募専用の履歴書そのものであった。これらのスペースは10年前には新商品やキャンペーン告知の場だったのが、現在はスタッフ募集の告知場所と化している。少子高齢化を背景に、フランチャイズ・直営を問わず、他店舗経営店舗において運営スタッフの人手不足が顕在化していることを感じる。
 この少子高齢化に伴う人手不足を、大手コンビニエンスストアや外食チェーンでは外国人留学生の採用強化により埋めようとしている。現地に研修施設を設け、来日前に研修をする取り組みや専門学校での説明会が行われているという。採用後も外国人従業員を戦力にするためには、「お辞儀」などの所作や「コンビニ独特の言い回し」を踏まえたリアルな場での研修会が開催されているという。「ちくわぶ」「餅きんちゃく」という単語はイラスト付きの単語カードのようなものでReadingして記憶することも可能だが、お客さんとの会話の中で「辛子はおつけしますか」「お箸は何膳いりますか」「おつゆは入れますか」というSpeakingは、よどみなく口に出しコミュニケーションできるようになるためのアウトプット・トレーニングが必須であろう。ただし、アウトプット・トレーニングは個別に練習相手が必要で人的な対応工数がかかるのがネックとなる。現在、その対応を担っているのは各店舗の店長クラスだ。業務の指導もしながら、日本語教育も行っている。もちろん、留学に際して日本語検定をパスしてきている外国人留学生を採用しているので、ある程度の日本語の読解はできる。しかし、日本語検定にはSpeakingがないため、「読めても話せない」という留学生は多い。

■公教育の現場で使用されはじめたAIツール

 このような状況は日本の学校でも起きている。英語について「読めても話せない」という状況を脱するため、英語でも「聞く・読む・話す・書く」の4技能を身につけるべく、教育現場では変革が叫ばれている。現行の大学入試センター試験に代わり2020(平成32)年度から導入される「大学入学共通テスト」では、大学入試センターが出題する問題とは別に、英語に関して4技能をすべて評価することになる。また、同時期に公立高校の入試英語でも「話す」試験を導入する方向となっている。
 その公教育の現場で、今注目され始めたのが、「英語4技能対応授業」を実現するためのAIツールだ。AIが教師にとってのアシスタントを務め、生徒にとっては練習相手、トレーニングパートナーとなるシステムだ。AIの場合は、「正解or不正解」の、「◯か×」の判定ではなく、「文意はOK、ワードもOK」などの曖昧な判定もできるため、Speakingの「ストライクゾーン」が認識できることが強みである。
 デジタル・ナレッジ社では、2017年秋よりこの製品版「トレパ」をリリースした。個人が使用する学習アプリでもAIを利用したものが他者からも発表されているが、このトレパは教える側が「エディター」機能を使うことで、オリジナルの教材が作成できることが特徴だ。

先生のための「英語4技能対応授業」実現AIツール「トレパ」
https://torepa.jp/

■店舗オペレーションのトレーニングにもAIツールを転用可能

 このAIツール「トレパ」の一部機能を日本語へ転用するために開発を進めているのが「トレパJ」だ。トレパのデモを見た方々から『日本語版はないのか?』という問合せが相次いだ。外国人労働者のほとんどが、日本語の読み書きについてはある程度できる。企業の採用担当者や日本語学校の教員が求めているのは、日本語の発音に特化したトレーニングだ。「トレパJ」もトレパと同様、教える側が「エディター」機能を使うことで、あらゆる日本語文の発音をチェックできる。例えばコンビニのフランチャイザー担当者が「コンビニ基本接客用語」などで作り込むとで、外国人スタッフのトレーニングにそのまま使用することができる。

例えば、

  • Thank you for coming.
  • Do you need a straw?
  • How many chopsticks do you need?

これらは、今度は日本人スタッフの対外国人対応のためのトレーニングに使用することもできるであろう。

 現在では、手のひらサイズのマルチ言語翻訳機も発売されてはいるが、例えばお寿司屋さんやお土産物屋さんで外国人客と多少深めのコミュニケーションを取るには向くが、 常にレジ前に列ができているようなコンビニやファストフードなどの店舗では、頻出センテンスを覚えてしまった方が明らかに速いと思われる。

 アウトプットする話法トレーニングを増やしたい、ロールプレイングを増やしたい、しかしながら対応するトレーナーの人数や工数に限界がある。そ のような時にはAIツールを活用してはいかがだろうか。

 外国人留学生で、例えば「工場ではなく、コンビニで働きたい」という動機の一つに、日本の独自の食文化・季節折々の風習、そして先端サービスが詰まったコンビニで、日本人客との多少の交流の中から、日本語を交えた実際のやりとりを学べたい、という面もあるようだ。
 FC本部や店舗経営側にとっては「外国人スタッフ活用の手段」としての検討かもしれないが、外国人留学生にとっては日本での学業の傍ら、アルバイトすることも一つの勉強でもある。教育ICTによる用語研修が異文化コミュニケーションの一助にもなればとも思う。

【関連業界にご関係の方に、この『提言』についての感想や可能性を訊いてみました】

No.2補充・清掃・整備などの業務オペレーション現場での活用提言

「業務推進支援システム」と「資格」と「学び」のシームレス化

2018/4/1
eラーニング戦略研究所
所長 青木 秀


■「ホテル不足」が生み出す「ホテルスタッフ不足」

 2年後に控えた東京オリンピック・パラリンピックへの期待や、インバウンド(訪日外国人)需要の急伸を受けて、東京をはじめとする都市圏ではホテルの建設ラッシュだという。「東京23区・大阪市・京都市の3大マーケットのホテル客室数が2017年から2020年にかけ、38%増加する見込み」*1という調査も出ている。
「ホテル不足」を受けての建設ラッシュの中、ホテル業界の人材が不足しているという。サービススタッフもさることながら、客室清掃員が圧倒的に不足しているという。 “物流などさまざまな業界で顕在化する人手不足。日本人に代わって現場を支えるのは外国人労働者だ。清掃業界でも、ベトナムやネパール出身の留学生が増えている。ただ、留学生には入管難民法が定める就労制限(週28時間)の壁があり、平日には授業もある。業者からは「衛生観念が異なる面もあり、新人教育が難しい」との声も漏れる。”*2

■EPSSがサポートする作業工程チェックと共有

 かつては、商業施設内のトイレの中には「清掃しました」という張り紙があった。数時間ごとに担当清掃員が巡回清掃し、完了するとチェック印を押していくというものだ。また、ホテルでは、チェックアウトタイム前後には客室メイク担当者が各室をまわる清掃用具・交換備品の入ったワゴンに、ルームナンバーと完了チェックシートがバインダーに挟まれて、ぶら下がっているのを見かけたが、これもあまり見かけることがなくなってきた。 かつては内線電話を駆使してフロントと客室メイク担当がやりとりしていたこうした進捗共有は、スマートフォンに置き換わっている。
 こうした支援システムは1991年には米国で発行された著書を持ってEPSS(Electronic Performance Support System)と定義されたものの発展形である。初期のEPSSでは、PCを利用して仕事の現場で分からない事があれば、その場で直ぐに調べて回答を得るヘルプ機能を中心としてコールセンターなどのデスクワークに役立てられていたが、スマートフォン等のモバイル端末の活用により、より広範囲な仕事現場でEPSSが採用されるようになってきている。
 現在の客室清掃員不足の中、日本語がうまく話せない外国人労働者にも務まっている背景にはこのテクノロジの進化もある。

■「技能資格認定」と進化型EPSSを結びつけることで実現する新しい世界

 前述のEPSSで入力チェックするスタッフが持つのがスマートフォンなら、現在主流となりつつあるeラーニング学習の入口もスマートフォンである。それではいっその事、1つのログイン画面から学習もでき、EPSSに入ることもできるようにしてはいかがだろうか。eラーニングとEPSSの組み合わせにより、初心者が熟練者に成長する段階を短期間に加速するとともに、生産性と品質向上を仕事現場での実践を通して確認する事ができるはずだ。
 各種の業界を統括する協会や団体では、作業基準の定義やその対応スキルをレベルごとに平準化させ、さらなるスキルアップへの道標となる技能検定を実施しているケースも多い。受検者は独自に学習をし、年に数回の試験タイミングに設定された試験会場に足を運び一斉に試験を受ける「リアル型」のものである。この数年、これをeラーニング化できないか、という検定主催団体からの相談がデジタル・ナレッジに入るケースがここ数年増加している。もちろん技術的には可能であり、いくつかの解決をしてきた。
 そもそも、各自が多忙な中で、限られた受検日に向けて、計画・準備・学習・受検・合格or不合格が確定するプロセスは多くの日本人にとっては慣れた受検方式であるが、果たして実力が本当に測れているのか、実務能力と乖離が生じていたり、これにより資格制度が形骸化しているケースが世間の実務資格には多そうである。
 「会場での一発試験での合格」ではなく、「学習履歴と技能遂行履歴をもって認定」とすることとしてはどうだろうか。試験実施団体本部による「通常の受験型を、養成課程化する」という概念の変更と、あとは技術的にはさほど困難でもないシステムの繋ぎこみで、「学び・資格・仕事」が一体化した世界が実現する。教育ICT・eラーニングの新しい活用により、資格を「養成課程」*3とすることにより可能となる。これにより、本物の熟練者として確実に、かつ、早期に適切な資格を付与することが可能となりえる。採用難・育成難にある業界にもプラスであることはもちろん、従事者(認定資格受検者)にとっても合理的ではないだろうか。

■養成課程 *3

 学習の質と量が保証された学習実績による資格取得の仕組みのこと。養成課程は、養成しようとする資格に応じて、資格保有者として必要な知識及び技能を養うことを目標とした学習カリキュラム。告示により内容と程度が定められた授業を講師が講義し、養成課程を修了することにより国家試験合格者と同等の知識、技能が習得され、国家資格が付与される。修了試験についても、授業の範囲から問題が出題されるが、試験自体は厳格かつ公正に実施されている。養成課程は、容易に資格が取得できるようにすることを目的とするものではなく、資格に求められる水準までの知識等について授業をした上で、その理解度を修了試験によって確認するものであり、さらにeラーニング化することで受検者の学習スタイル・就業スタイルにあわせた運用が可能となる。

*3 養成課程https://pqp.co.jp/

【関連業界にご関係の方に、この『提言』についての感想や可能性を訊いてみました】

No.32020年に向けてボランティアの日本語研修での活用提言

AIを使った「わかりやすい日本語発音トレーニング」

2018/7/20
eラーニング戦略研究所
主任研究員 岡田 健志


■拙い英語接客よりも、日本語をより分かりやすく

 サッカーのロシアワールドカップが終わり、2019年にはラグビーのワールドカップが行われます。2020年には東京オリンピックです。多くの海外からの観光客が見込める中、ビジネスとしても、文化交流としても、コミュニケーションが問題になることは間違いありません。多くの店舗で、英語・中国語・韓国語などでの言語対応ができる体制がとられつつあります。
 ビジネスシーンでは多言語対応は推進されているものの、他方で、多くの市民のボランティアなどの協力で成立する行事では言語対応についてはボランティア個々人の能力に依存していることも多々あります。そのため、ボランティアに参加する際も外国語活用についての負担感から、ボランティア参加についての敷居の高さを感じることもあります。また、対応の個人差も生まれやすくなります。
 短期間の、しかも学習者に負担をかける英語学習よりも、海外のお客様にも聞き取りやすい・分かりやすい日本語で接遇するという方法のほうが現実的だと思われます。実際にボランティアの方々の心理的負担を考慮しても、日本語をブラッシュアップする方が、英語学習よりもハードルは低いと想定されます。
 一方で、「日本人だから、いまさら日本語の勉強をする必要はない」と無意識に考える人も想定されます。しかし、自分が知っていること、普段使っていることを、人に説明したりプレゼンしたりすることが異なることと同様、わかりやすい日本語を使うということは誰しもがうまくできているわけではありません。また、方言や滑舌の問題もあります。私たちは普段、「使用している」ということであまり自省をしませんが、日本語に詳しくない人が聴くと、標準的な発音になっていなかったりします。

■「通じた!」という感動は拡散される

 例えば、私がイタリアに旅行にいくなら、買い物くらいはイタリア語でやってみたいです。日本語で対応された場合、確かに楽です。レストランやホテルなら、それが安心感につながります。でも、道端で話しかけたイタリア人がすべて日本語で対応してくれるなど望むべくもありません。
 しかし、ガイドブック片手に言ってみたイタリア語が通じた場合、また、マルシェのおばさんのイタリア語が聞き取れた場合、「通じた!」という感動が芽生えるでしょう。もし、このような「通じる」という実感がイタリア中のどこででも起こるとわかれば、様々な場所でいろいろなものを買いたいなど購買意欲を刺激することになります。また、それらの感動や購買の記録は周囲の人に拡散されていくでしょう。
 このような状況を日本で展開できれば素晴らしいことです。そのためにはクリアすべきハードルがあることも確かです。

  • 片言の日本語で話しかけられても、理解しようとするマインドセット
  • 分かりやすい日本語とはどのようなものかという知識
  • 海外からのお客様が、何を求めて日本に来ているのかというデータについての知識
  • 自分だけで対処できない時に、誰・どこに相談すればいいかという知識
  • 海外からのお客様に聞き取りやすい発音のトレーニング

 マインドセット以外のところは、今では用意しやすいと思います。知識についてはeラーニングで用意ができますし、発音トレーニングもAIの技術の一つである「Speech to Text」という機能を使えばいつでもスマホで練習ができます。ちょっとした準備で、感動は支えられます。ボランティアの方に教えてもらった日本語をSNSで拡散する旅行客。そのボランティアを支える手軽なeラーニング。
 そのラーニングは、例えば大きなイベントのために行われたとしても、その後もずっと地域で活躍する中で息づきます。ボランティアの方々自身が、この「通じた!」の感動の体験をし、その後も、それぞれの場所で継続することが期待されるからです。

■翻訳アプリや翻訳機器を使う場合にも、わかりやすい日本語を

 ところで、googleなどの翻訳機能や翻訳アプリも市場に出はじめています。このような自動翻訳によって、上記のような学習機会は不要になるのでしょうか。決してそのようなことはないと思われます。
 理由は大きく言って2つあります。
 一つには、「通じた!」という感動は人と人の間で起こることだと思うからです。やはり、異国の方と直接言葉を交わす、その時に傾聴の姿勢を示してくれる…このような交流をしたいのであって、単に言語が通じればいいわけではありません。
 二つには、自動翻訳の機能の限界の問題です。現在の技術はかなり精度が高くなり、実用にはほとんど十分と言えます。一方で、当然ながら、入力表現は誤解のないありふれた表現の方がきれいに翻訳されます。このような機能は、ある程度のリテラシーがある人が使った場合に効果があります。分かりやすい日本語をインプットに使え、かつ、外国語に自動翻訳された時にアウトプットされた文章をある程度はチェックできる場合です。実際に、私は先日、渋谷で中国の方が翻訳アプリ片手に日本人の店員さんにいろいろ質問していた場面に出会いました。その際、中国の方は翻訳アプリを信じて「なぜ通じないの?」という顔をしているのですが、日本人の店員さんはアプリが提示している日本語の意図が良く分かっておらず困っていました。

 このように、海外からのインバウンド対応のためのボランティア育成という視点から、「わかりやすい日本語教育」の必要性とそこから派生する日本のブランドイメージの向上について整理してみました。その背景には、自らのコミュニケーション手段(この場合は「日本語」)を点検しメンテナンスする機会創出が必要ではないかという提言をしました。これらは大規模なイベントだけの話ではありません。地域創生が叫ばれている中、観光地での一つの戦略になるでしょう。しかし、日本国内のボランティア育成や観光の観点だけではなく、利用されたeラー二ングコンテンツはそまま海外での日本語教育や旅行会社やガイドブックでの宣伝にも利用されるべきだと思います。
 海外では、日本語に対する興味は高まってきています。アニメやゲームの影響もありますが、文化交流先として日本が選ばれることもあります。その一つの証左が、日本語教育が各国の初等中等教育でもなされているという事実です。その領域に「わかりやすい日本語」が浸透していき、世界各地で日本語が使われることで、日本や日本のサービス・文化に対する憧れが醸成される仕掛けをつくっていきましょう。

【関連業界にご関係の方に、この『提言』についての感想や可能性を訊いてみました】

No.4文化・技術学習が及ぼす販売促進での活用提言

「なぜ、この製品ができたのか?」のラーニングが「欲しい!」を創る

2018/9/20
eラーニング戦略研究所
主任研究員 岡田健志


■「商品」の付加価値は、誰が創りだすのか?

 『新・観光立国論』の中でデービッド・アトキンソン氏が印象深いことを記している。京都の二条城に観光に訪れても、ただ畳の間が展示されているだけで、そこでどれほど大事な歴史的出来事(大政奉還)が行われたところなのかという説明がない、と。興味を持たせられないのであれば、せっかくの観光資源もその価値を発揮できない。ナイアガラの滝は世界的な観光名所だが、これは人工的には創れない。その場に行くだけで、その迫力に圧倒されるだろう。まさにSight-Seeingに価値がある。ところが、文化的・歴史的なものは、人々の営みの長い時間の流れの中で培われていた価値があるが、それはちゃんと価値づけをしていかないとその価値が発見されないまますたれていく。
 私の家の近くに、沖田総司終焉の地と伝えられる場所がある。単にその碑だけがあるのだが、幕末の歴史が好きな私からすると、非常に感慨深い。何人もの友人に紹介した。このように、物理的な場所にどのような思いをもって価値を見出すかは知識・嗜好に大きな影響を受ける。同様に、建物の柱の傷でも「応仁の乱の時についた傷だ」と説明されたり、同じ茶器でも「千利休が愛用していたものだ」と言われると、今まで見ていたものが急に価値を持ち始める。つまり、価値は私たち一人ひとりの主観がある知識を得た時に創り出すことがある。要は、情報が共有されて初めて価値が生まれるものがある。

■自己完結しないeラーニング「修了証」の可能性

 テレビなどで、レストランや地域の建物などを芸能人が紹介していく番組がよくある。王道ともいえるこのような番組が多数あるということからも、視聴者が「知識を得たい」「知らなかったことを知りたい」という欲求を潜在的に持っており、かつ、それが紹介された側もメリットがあるということの証左だろう。「ご当地検定」というものがブームになったこともあったが、人は「知る」欲求をもち、またそれを「褒められる」ことを求める。そうなると、自ら情報を発信したいという欲求を持つ場合がある。特にSNSが全盛の現代、自らインフルエンサー(情報を拡散する人々)となろうとする人がいる。その人たちは、情報拡散のためであれば身銭を切り、またその情報拡散自体に価値を見出し、スポンサーやファンがつく。インフルエンサーが取り上げた場所・物産・サービスには注目が集まる。もちろん、場合によってはステルスマーケティング(通称「ステマ」)と言われて批判されるので注意は必要だ。
 ここで、知識を得る方法だが、テレビで取り上げられること以外にネット上のインフルエンサーというチャネルがあることを指摘した。インフルエンサーの強みは、フォロワーが自らの嗜好の方向性をそのインフルエンサーに重ねているからこそフォローしているので、彼・彼女が勧めたものは受け入れやすいというところだ。
 個人でeラーニング講座を受講できるサービスがいくつかある。SchooやUdemyといったサービスは、自らが講座を選び、学ぶ。しかし、「学びたい」と欲求はそれで満たされスキルアップできるものの、その学びをフックにして自らインフルエンサーになろうという動きにはなかなかならない。つまり、学びが自己完結しているのだ。
 その点をクリアしたeラーニング講座がある。Nアカデミーが提供する『温泉ソムリエ認定講座』だ。講座名に「認定」という表現があるように、「温泉ソムリエ」という資格がある。「温泉の知識」や「正しい入浴法」を学ぶことで得る資格だ。修了証はスマホで表示することができ、温泉宿などで修了証を提示すると特典が受けられることも。資格なので名刺に肩書として載せる人もいる。
 通常、個人向けeラーニングというと自己完結型が多い。企業での人事研修であれば、eラーニング修了がそのまま人事考課に反映されることもある。このような「次の発展」が個人向け講座では少ないのだ。しかし、言い換えると、自己完結にならず社会への発信・拡散ができる発展型eラーニングには大きなビジネスの可能性がある。まず受講者自身が例えば全国の温泉をコンプリートしたいと思うことで現地に赴くことが考えられる。その際、知人を誘うだろう。知人に知識を拡散することで、その知人が今度は温泉ソムリエを取得するかもしれない。直接誘わなくとも、SNSでの拡散も同様の効果を促すことがある。

■商品の価値は、「その裏側・壁の向こう」を見せることで高まる

 クールジャパン戦略が高まる中、注目されているプロダクト・デザイナーがいる。大阪に本拠地を持つ有限会社セメント・プロデュース・デザインの社長である金谷勉氏だ。彼らは全国各地で、伝統工芸の職人たちによるセミナーを支援している。
 100円均一に行けば食器は手に入る時代。なぜ、備前焼の器に数千円を出す必要があるのだろうか。一般的な消費者の感覚からするとそこに価値を見出せない。しかし、金谷氏によると、「売り場にある商品だけ見ても分からない価値がある。それを、作り手の技術・知識を知ることで理解できるようになる」と、売り場ではない「つくる現場」(裏側・壁の向こう)を見せる営みをしている。いわば、「購入者に目利きできるようになってもらう」活動であり、「価値がわかる購入者を育てる」活動である。
 実は、私も金谷氏が主催するワークショップに参加したことがある。備前焼の職人が工程を紹介するだけではなく、他の地域の器との違いなども説明してくれて、私自身が多少の蘊蓄を語れるようになった。それ自体が楽しいし、備前焼を見かける度にその時の知識がよみがえる。
 このような「学び」と「購買」を結びつける新しいジャンルがオンラインで求められているのではないだろうか。Web広告でも、新しい流れがきている。例えば、検索エンジンで「肩こり」「原因」と調べてみると、改善するための運動法や栄養素を学ぶことができるサイトにとぶ。最後まで読んでみると、サプリ会社提供の記事だということがある。
 文化・技術保存の立場からeラーニングとして保存すると同時に、受講者を通じて地域の伝統・文化・歴史のアンバサダーを育成する。それがそのまま伝統工芸などの購買層を育てていくことになる。そのような活動が求められている。

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「教育ICT」とは、教育現場で活用される情報通信技術そのものや取り組みの総称です。

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