HAS研登壇報告①『教育×AIの可能性~英語4技能学習をいかに支えるか~』

By | 2018年3月14日

桜が待ち遠しい時期になりましたね!

デジタル・ナレッジは上野公園にも近いので、寄り道が楽しくなりそうですね! 桜大好き、トレパ「室長」岡田です。

 

さて、3月8日。大手町にあるKDDI大手町ビルにて行われましたHAS研(http://www.has.or.jp/)にて登壇してきました。

いや~ 緊張しました!というのも、今回の登壇者は、

①乾健太郎 先生 (東北大学大学院 教授、理研AIPセンター・自然言語理解チームリーダー、高大接続改革会議・委員)

②神田直之 さん (日立製作所 メディア研究部 研究員)

という、お二方とも、AIのガチの専門家! そんな中に、私が並んでいいのかな…という「場違い感」は半端なかったですねw 教育からのアプローチなので、その点では寄与できたのかな、と思っています。

 

今までのセミナーなどでは話していないことも新たに発表してきましたので、今回は岡田の発表内容で新しい部分を中心に報告します。

今回の発表では、「溝」をテーマとしました。

人は、溝があると越えるかどうかを考えます。ジャンプするのか、回り道をするのか、途方に暮れるのか…

新しい技術が出現した時も、似たような対応をするでしょう。学び・乗り越え・使いこなすのか、回避・拒否するのか、思考停止に陥るのか…

 

それだけではなく、今回の発表のテーマが「コミュニケートするAI」だったからでもありますが、円滑なコミュニケーションの背後にはミスコミュニケーション(溝)が絶えず可能性として存在します。このようなスタンスから考えてみました。

 

(A)AIについて、研究者・技術者とサービス開発者・ユーザーに「溝」がある

社会的課題①

まあ、当たり前と言えば当たり前ですね。しかし、この溝がプラスにもマイナスにも働いています。

良いことで言うと、「AIとはどんなことができるのか、学ぼう!」としてAIについての教育のマーケットが広がってきています。また、雑誌や書籍など、AI関連の本や特集は日々増加しています。

コンサルティングやカスタマイズといった仕事もそれで増えており、経済効果はかなりのものです。

 

他方、何かAIについて「過剰な期待」や「拒絶」という現象も起こっています。すぐに「シンギュラリティ」の話題をしたがる方は…「AIを学ぶ」ということから離れて思考停止しており、それ自体が問題なのですが、そこに気付いていません。

AIの関係者が集まっているということもあり、この点を研究者・技術者側からどのように市場に降りていくかを提言しました。

ちなみに、デジタル・ナレッジとしては、この「溝」に対して「トレパ」を提案しています。

デジタルナレッジのミッション

誰にでも使いやすい、教材編集ツールとしての『トレパ』というコンセプトがそれです。

また、ワークショップなどを行うことで、ユーザー支援も行います。このように、溝があるからこそ活性化する市場をつくっていくことは、ビジネスとして重要な視点だと思っています。うまく「トレパ」を使って一緒にビジネスを創っていただける方がおられましたら、お気軽にお声がけください。

 

(B)「教育×AI」の独自性による課題

「サービス×AI」や「エンターテインメント×AI」と異なり、「教育×AI」はいくつかの外せないポイントがあります。その一つが「ハードル」です。

 

①学習者には、タスク・ハードルが必要

ユーザーと学習者の溝

一般的なサービスでは、AIによってユーザーの利用「ハードル」が下がっていくことが求められます。例えば「自動翻訳」。究極は英語を全く学習していなくても、「ほんやくこんにゃく」のように、自分は日本語を話しているつもりでも、先方には英語で伝わる状態を実現することです。そのためには、どんな発音でもAIが好意的に認識し、多少文法的に間違っていたり言葉足らずでも意図を受け取り、補完して翻訳する。それを目指したサービス設計や機能開発を行う。

ところが、語学学習者にとってはどうでしょうか?

どんな発音してもOKであれば、相手に伝わる発音をする練習は不要です。

どんな間違った発言をしてもOKであれば、相手にわかりやすい表現を工夫する練習は不要です。

つまり、教育では学習者には適切な「タスク」と「ハードル」が必要です。それがないと、相手に伝わりやすい発音・発話をトレーニングする意味がありません。

野球の投球練習になぞらえると、トレーニングの「的」としてストライクゾーンが必要です。またそのストライクゾーンに入ったかどうかのジャッジがあるほうが良いです。

ストライクゾーンの提供

その点、語学学習でも同様のことが言えるでしょう。部屋で一人で教科書を朗読している時、ちょっと虚しさを感じるのは、このような「的」も「ジャッジ」もなかったからではないでしょうか。

その点で、AIの機能としても設計としても、「ハードルを下げるほどいい」というのは教育分野では言い切れません。(この点、意外と皆さん感銘を受けておられました。)

 

また、教育には教育特有のデザインが必要になります。人には人の良さがありますが、AIにはAIの良さがあるはずです。それを利用します。

②AIの特性を活かした教育デザインが必要

AIによる教育デザイン

私にも「思春期」というものがあり、今からは考えられないような内向的な学生生活でした。ですので、英語の授業中に「はい、ではこの箇所を読んでくれるかな?岡田君!」と言われると途端に緊張したものです。そこで、「こんな発音をした方がいいのだろうなあ」とは思いながらも、実際には照れ隠しの「カタカナ英語」を発音していました。それでも、先生は特に何も指導することなく、「はい。ありがとう。次は~~」とスルーしていくのでした。

オンライン英会話もありますが、クラスメイトの前ではないとは言え、相手が人間ですので、やはり抵抗感を感じる場合もあるでしょう。この抵抗感があるので、私もいまだにオンライン英会話を申し込めずにいます。

相手がAIだと完全に「見られていない感覚」になり、自分がまるでトム・〇ルーズにでもなったように英語発音を楽しむことだってできますw

 

それと、大抵の語学指導は「先生」とのやり取りとなります。交流分析などの心理学的な言い方をすると、自分(受講生)は子どもで、先生は大人のような関係性が無意識に成立します。「先生なのにしっかり教えてくれない!」「先生なんだから、こっちが下手でもちゃんと認識してよ」というのは受講者が持つ、子どもっぽい甘えである場合もあります。しかし、相手がAIであり、「子ども」という位置づけをすると(キャラクターづけをすると)、『自分がしっかりしなきゃ』と丁寧な発音を行う姿勢が養われる可能性があります。

余談ですが、大阪大学の入戸野先生の研究によれば、学生は「カワイイ」ものや写真を見ると、集中力が増し、精緻な判断ができるようになるとのこと。これは生理心理学の分野になります。教育である限り、このような心理学の知見も取り入れたデザインをしたいものですね。

また、AIが相手だと、良い意味で肩の力が抜けて「完璧な答えしか言いたくない!」という日本人特有とも言われる減点主義的な学習観から自由になれる可能性が出てきます。

この辺りは、今後の実証が必要でしょうが、メリットも考えていかなければなりません。

 

(いきなり)⑤「評価」には根拠が求められる

③④はとばして…⑤です。

『トレパ』という名称は、「トレーニングパートナー」が由来です。ところが、「評価」もしてくれるのでは?と期待されることが多いです。

ここも、(A)に関連することなのですが、サービス開発側としては「そんなの、検証もしていないのにやって大丈夫なのですか?」と思います。

根拠がある評価

逆の言い方をすると、検証もしていないのに、ダメだとか胡散臭いと思われることも変な感じがします。

評価に関しては、教員の皆さんが本当に「使える!」と検証してから広めていければな、と思っています。ですので、どんどん実証してくださるパートナーの方々が増えていただければ助かります。

同じ根っこに、『トレパを使うと、トレパに合わせた発音のクセがつくのでは?』と否定的なことを言われることがあります。

 

それを言い出すと…

 

カラオケの自動採点に合わせるように歌うことができる人が、必ずしも歌が上手いわけではない、という論法です。

「おめさ、訛ってんな?」とあるおばあさんに言われたとして、関西人である私はどう答えたらよいでしょうか?

例えば、東北弁で育った方からすると、関西弁は訛っています。関西人からすると東北弁も訛っています。「自分にとって正しいと思う発音の規範」があれば、人間はそれに合わせて学習します。これって、規範がAIでも人間でも同じことですよね?

失礼な表現かもしれませんが、私の高校の英語の先生の発音は本当にひどかったです。私たちの学生時代にはテープ・CDがあって、それでネイティブの発音にふれる機会がありましたら、まだマシですが、そうでなければあの先生の発音が規範となっていたでしょう。

標準語というのも、社会の中で構成されているだけで、絶対的な基準ではありません。ネイティブといっても、よく小説でも「南部訛りが…」という表現が出てきます。つまり、唯一絶対の規範というものはなく、ゆるやかに「この発音が聞きやすいよね」という暗黙の了解の上に成り立っていると思います。

AIに合わせる発音の是か非かを問うている間に、どんどんトレーニングをしていくことが大事で、トレーニングをしっかりこなしている方は、もし発音の微調整が必要であっても、それに対応することがしやすくなると思いますよ。

 

現段階で、スピーキングトレーニングの「機会」が安定的に教育現場で供給されていない状況では、トレーニングの「機会を創出すること」、それを絶え間なく教育提供者側・受講側が「検証・実証」していく社会。それが健全な形なのかと思っています。

 

 

【関連情報】

①トレパ公式サイト(トライアルも申込ができます。) https://torepa.jp/

②【3月28日】AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ~英語指導につかえるコンテンツを考え、つくる!~
③【3月23日】関西初実施!
 《先生向け》AIによる英語トレーニング教材制作ワークショップ@四天王寺高等学校・中学校
③AINOWへの岡田の寄稿文 http://ainow.ai/2017/12/15/129360/