Monthly Archives: 6月 2018

「緑色の目をした猫を飼っているアメリカ人が自転車で逃げた泥棒を追いかけた」をAIは添削できる?

こんにちは!研究員・岡田です。

今夜は、サッカーワールドカップ・ロシア大会で「日本vs. ポーランド」戦ですね! 寝不足必至で、明日はセミナー(https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/16261/)です。残席ありますので、当日申込お待ちしております!

弊社の英語AIツールのトレパも、タイムリーな公開コンテンツを用意しましたよ! 子供たちには、こんな身近な英文の方がいいのかもしれませんね。

 

先日、ある方がAIについて講演しているのを拝聴する機会がありました。

もともと教育畑の方で(そこは岡田と同じ)、AIを教育に活用するスタンスでお話をされていました(そこも岡田と同じ)。

 

ところが、やはりAIを論じるときに気を付けなければならない微妙なニュアンスをスルーしていたように思います。

あくまでも個人的意見ですが、ある特定の学問領域について「論じる」ためには、それなりの下調べをしなければならないと思います。学術書を一定量読んだうえでの話なのか、開発担当者から十分にヒアリングした上での話なのか、視点や立場や情報のソースについてはさまざまでしょうが。

その際のAIに対してのミスリードな論点は3つあったと思います。

 

① 強いAIと弱いAIの混同

② ルールベースと統計ベースの混同

③ 教育とエンターテインメントの混同

 

今日は、①について(だけ)書きます。※②③はセミナーで触れる予定。

 

①強いAIと弱いAIの議論 ~やっぱりシンギュラリティや無くなる職業の話題が払拭しきれていない問題~

最近では「シンギュラリティの話題」「いずれなくなる職業の話題」が(いくぶんトーンダウンした印象がありますが)雑誌などで取り上げられることもあり、メディア側の都合での情報が流布しているようにも思います。

そもそも、シンギュラリティという話題は、特定の論者による論であって、決定事項ではありませんし、専門家の中で一致した見解でもありません。しかも技術の進歩についての話です。

職業の話は、職業の中の「機能」が自動化しやすいかどうかについて考察した結果の一つの論であって、ある程度は重なるものの、調査団体によっては結果・評価に差異があります。

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そんな中、教員の方々とお話をする機会がありました。そこで問題となっていたのは、「教育」現場にAIが入り込むかどうか、です。

結構真剣に「教師ってなくなる職業なのでしょうか・・・」と悩んでおられる方もおられました。

 

オズボーンさんの『未来の雇用』では、残る職業の中に「小学校教員」が入っています。興味深いのは、「教員」ではなく「小学校教員」なんですよね。ところが、別の調査では「教員」は無くなる職業に挙げられています。これらの論点は繊細な問題です。職業ベースで語るのではなく、職業のメイン「業務」が自動化できるかどうかという視点で議論しなければならないと思います。

このテーマの議論が錯綜するポイントの一つが、表現の使い方です。「職業」「仕事」「業務」「機能」という表現が無批判に使われる時に、誤解がうまれていますね。また同じ「仕事」という言葉でも、「やりたい(やるべき)仕事」(メインの業務)と「雑務」が混在して使われる傾向にあります。

例えば、立教大学の中原淳教授のブログ(http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/8944)でも紹介されていましたが、教員の多くは「業務改善をして空き時間が生まれたら、またそこに仕事をいれる」と答えているという事実があるようです。ここで「減らした(減らす対象となる)仕事」と「(新たに取り組みたい)仕事」をしっかり区別・整理して調査報告を読まないといけません。そうじゃないと論理的パラドクスのような話になってきます。

 

人工知能の活用に関しては、まだまだ人間のような「意識ある存在」や「汎用AI」の道のりはまだ遠く、せいぜい弱いAIをさまざまな具体的な「業務」「機能」に対して限定的に利用する、というのが現状です。まず状況を知ることですね。(弱いAI、強いAIについてはこちらを参照ください。)

 

しかし、AIの活用の限界について知る前に、「教員不足」「教員の仕事の効率化」という社会的要請もあり、「何とかして教員の業務をAIが肩代わりできないか?」というニーズの方が心理的に勝ってしまっている場合が多々あります。

「え?AIってこんなこともできないの?」という反応をされる方も多いのです。

 

一例だけ挙げておきます。

例えば、自由英作文の添削。これをAIができるかどうか、です。

添削をするためには、生徒の原稿が必要です。

・原稿を受け取る

・生徒が「本来書きたかったであろう内容」を添削者は推測する

・その内容(だと推測されるもの)と、実際の原稿の「表現の違い」を確認する

・「表現の違い」を、語句・文法・語法・意味・文化風習という観点から整理する

・それぞれの観点からアドバイス・提案を行う

・できれば、上記に加えて生徒の学習状況・習熟度を加味する

添削という一言の中に、人間の知能がフル回転していることが分かります。

 

語句や文法の診断くらいはAIでもチェックできる、と思われるかもしれません。確かに、AIを使って取り組みが実際に行われている分野です。辞書があれば十分対応できると考える方もおられるかもしれません。しかし、そう簡単なことではありません。

例えば、「緑色の目をした猫を飼っているアメリカ人が自転車で逃げた泥棒を追いかけた」という文章は、何通りにも解釈ができます。国語の先生であれば、読点の位置を工夫するように指導するでしょう。そうすることで、表現したい状況が制限されていくからです。

ここで、人間であれば、「本来書きたかったであろう内容」を推測するか、生徒に直接「意図を尋ねる」という行動をするでしょう。これをAIに任せてしまおう!というのは、教員の本質的な仕事を自ら放棄することに近いのではないでしょうか。

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教育現場の様々な業務や仕事を整理し、それらを「人がしなくてもいいもの」「人じゃないとできないもの」(本質的な仕事)にちゃんと区分けして、どこから自動化・効率化していこうか…という議論の先に、教育ICT活用やAI活用という論点があります。

じゃ、実際にAIを活用することで教育現場にメリットはあるのか?

 

その答えは、お会いしてお話ししましょう。

 

【デジタル・ナレッジのイベント】

・【6月29日】《初等中等教育》事例から学ぶ「教育×AI」導入セミナー https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/16261/

・【7月12日】《初等中等教育》事例から学ぶ「教育×AI」導入セミナー https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/16261/

四天王寺高等学校・中学校のオープンスクールで「トレパ」模擬授業が行われました!

お久しぶりです。トレパ「室長」岡田から、eラーニング戦略研究所・主任研究員となった岡田です。今後、「研究員・岡田」を名乗ります。改めて、よろしくお願いいたします。

ところで、6月18日(月)はちょうど私は大阪にいました。妻の実家に宿泊していて、トイレに入ったところで大きな揺れ!阪神大震災を体験していたので、今回の大阪地震の際も記憶がフラッシュバックして少々うろたえてしまいました。大阪の皆さん、大丈夫でしたか?

さて、やはり強い経験(災害など)はその後の人生の場面場面で、さまざまな決断・判断に影響を与えますね。改めて「教育」や「学習」の重要性を感じます。一度インプットされ、強く刻まれた知識は簡単には消えないこと、教育に関わる人間として肝に銘じたいですね。

 

さて、なぜ大阪にいたかというと、大阪の四天王寺高等学校・中学校で6月16日にオープンスクールが行われており、その中で弊社のAIツール「トレパ」を使った英語の模擬授業が行われていたからです。

IMG_1432※晴天!

私もあたかも四天王寺高校の先生であるかのように、腕章つけて立っていました。

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・・・おかげで、ご来場の小6女子の皆さんと保護者の方々に『この教室に行きたいのですが・・・』と話しかけられ、対応するうちに、校舎内をある程度覚えてしまいましたw

 

さて、そんなことをしているうちに、模擬授業がスタートしました。

テーマは「発音」。ネイティブのエド先生に発音のコツを習い、その発音チェックをトレパで行う、というものでした。

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びっくりしたのは、エド先生はほとんど日本語を使わないで英語で説明を続けていくのですが、いくらその英語が分かりやすく丁寧だといっても、それだけでちゃんと行動できる小6生のレベルの高さ!驚きです。

今回は、フォニックスのいくつかのポイントをカンタンなものから難しいものへと3段階でチャレンジしてもらいました。

私立中学校を受験しようとする小学生ですので、

・PCの操作は指示がなくても行える

・発音の診断が悪くても、何度もチャレンジする

というというところで、見ていて感銘を受けました。ちょっと内容は難しかったのですが、四天王寺中学校に入学すれば、「こんなこともできるようになるんだ!」と思っていただけたのではないでしょうか。

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何より感銘を受けたのは、保護者の方々。

私に直接、『このAIってどんな風に動いているんですか?データベースは?』などと質問してくるお父さん。

『この(トレパ上での)発話の診断の数値の読み方ですけれど・・・』と、自ら発話チャレンジしてその評価について質問してくるお母さん。

『これは四天王寺に入学したら、家でも学習できるんですか?』と、もしかしたらご自身も勉強で使おうと思っているのではないかと思えるお母さん。

保護者の方々の関心が高かったのが印象的でした。

教育の世界には「再生産」という言葉があります。バーンスタインという学者が提案していますが、簡単に言うと、保護者の教養・知識・ものの考え方・言葉づかい(言語コード)がお子さんにも「再生産」される、ということです。

保護者の方々が、新しい技術や新しい教育方法に向き合う姿は、何よりお子さんたちの学業へのモチベーションになると思います。

 

学校は同学年のお子さんたちが集まって切磋琢磨する場所です。一方、家でもeラーニングで勉強ができれば、保護者の皆さんがお持ちの「好奇心」もお子さんたちの前で自然と示すことになるのかもしれません。

学びの舞台を学校から家庭へ。それもeラーニングの技術が支えることができる。そんな可能性を感じたオープンスクールでした。

 

四天王寺高等学校・中学校の関係者の皆様。お世話になりました。

 

■四天王寺高等学校・中学校公式サイト http://www.shitennoji.ed.jp/stnnj/

■トレパ公式サイトから、トレパの無料トライアルをお申込みいただけます https://torepa.jp/

「まねる」eラーニングの広がり

「eラーニング」という言葉で従来からイメージされていたものと、最近現場で動いているものの間に、ギャップが生じているのを感じています。従来の「eラーニング」とは違うものが生まれているのを感じます。その一つが弊社が「eXラーニング」と呼んでいるものです。

以前のblog「オンラインで経験を:eXラーニング (eラーニングの歴史)」の記事で、ここ近年見られるeラーニングの変化についてお話ししました。かいつまんで趣旨をお話しすると、これまでPCで行う知識習得がメインだったeラーニングが、スマホの登場により接遇マナーや業務手順などの経験をも扱うようになってきたというものです。マイクロラーニングの普及もこの傾向を後押ししています。この経験学習を「eXラーニング」(eXperience Learning)と(勝手に)呼称しております。

あのblogの記事から一年余りが経過した今、このeXラーニングへの展開はますます進んでいるように思います。今回はこのeXラーニングを別の観点から考えてみたいと思います。

今回の切り口は「動画」です。

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