オンラインで経験を:eXラーニング (eラーニングの歴史)

By | 2017年9月26日
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今回は昨今のeラーニングのトレンドについてお話しします。

eラーニング元年と言われたのが西暦2000年ごろでしたので、あれから20年近く経ったことになります。この間、様々な変化がeラーニングに起こりました。

企業内研修で取り扱う知識やコンテンツの内容を追ってみると、当初はWord/ExcelなどのITリテラシ、就業規則や会社のルールや運用マニュアル、安全衛生を伝えるところからスタートし、マルチメディアの特性を生かした英会話や、映像による接遇マナーなど、動画や音声を使ったコンテンツも出てきました。社長の訓示や経営方針を広めるのにも使われました。

この頃はまだ黎明期、一部の大企業や先進的な企業のみが利用していました。

eラーニングの普及のきっかけはエビデンスが必要な教育、PマークやISO取得の対応の教育ではないでしょうか。eラーニングのメリットの一つは、誰がいつ何をどのくらい学習して、結果テストが何点だったというのを人の恣意性なしに記録できることです。この特性を生かして全社教育を行うと、Pマークなどの申請が容易に行えるので、eラーニングは瞬く間に広がっていった感があります。

こうして導入されたeラーニングをより広く活用しようと、教材会社各社の提供するコンテンツを購入し、eラーニングシステムに載せて提供するのも一つのトレンドでした。教材会社さんは様々なカテゴリの教材を取り揃えカタログ化し、利用する企業さんはそのカタログから欲しいコンテンツを買って社員に提供したり、あるいは「カフェテリア形式」といって、カタログを公開し、社員が好きな教材を受ける形式もよく見かけました。

Flashというソフトを用いたアニメーションを多用したコンテンツもこの頃は結構見かけました。ストーリー仕立てものや、キャラクタが喋って解説するような凝った教材が人気でした。

eラーニングの受講者はいわゆるホワイトカラー、デスクワーカーが中心で、自席のパソコンや、あるいは研修ルームのパソコンを使って学習をしていました。

 

ここまでのeラーニングの特徴をまとめると

  1. 人事部や教育研修部が主体となって
  2. トップダウンに教材を提供し
  3. デスクワーカーが受講する

という感じでしょうか。

 

時代が経過し、コンテンツのあり方について変化が見られました。

出来合いの教材を提供するのではなく、各企業の業務に直結する教材を提供することで本業を引き上げようという動きです。このため教材を導入企業さん独自に開発するという動きが見られました。そこで生まれたのがセミナー形式の教材です。

セミナー形式教材の例

セミナー形式教材の例

上記は弊社のコンテンツ再生機能の例ですが、他社も含めて、このように講師映像とパワーポイントスライドを同期させて再生するプレイヤーは数多く存在し、企業ではこの形式の教材が盛んに作られました。

担当者が映像で喋り、それに同期する形でパワーポイントのスライドをめくったり、アンダーラインやカーソルを動かす仕組みはわかりやすく作りやすいと好評でした。

(ちなみに担当者の方が出演するのを嫌がり、俳優さんが出演されるケースも多々ありました)

教材会社さんの画一的な教材を学ぶ流れだけでなく、それぞれの企業独自の営業マニュアルや商品知識などの教材も併用して学ぶようになりました。

この辺りから、教育内容が人事部や教育研修部ではなく、実業部隊が業務上必要なことを整理して伝えたり、ノウハウをアーカイブする動きが出てきました。全社的に画一的な物を学ぶだけでなく、それぞれの部署や職種ごとに必要なことを学ぶスタイルが追加されてきたのです。eラーニングは本業の業績を引き上げる有効なツールとして認識されてきました。

特徴を整理すると、

  1. 人事部や教育研修部だけでなく実業部隊も主体となって
  2. 各業務に沿った独自教材を制作して提供し
  3. デスクワーカーが受講する

という感じでしょうか。

 

そんな中、デバイスの変化が訪れます。スマートフォン(スマホ)の誕生です。

実はスマートフォン登場前夜には携帯を用いて学習する形態(モバイルラーニング)も出てきました。補足的にテストや暗記ものの教材を受講するもので、あくまでもPCがメインでそれを補助するツールのような位置付けでした。可能性は随分模索され導入されましたし、弊社でも対応商品をリリースしておりましたが、ハードウェアやインフラの限界もあり、市場を席巻するほどには至りませんでした。

それがスマートフォンの登場とその後の普及で、eラーニングが大きくガラッと変わったように感じます。

特に若い世代ではパソコンではなくスマホを利用する風潮があるため、若い人を対象としたeラーニング、例えば塾や予備校の学びはいち早くスマホ対応が進みました。そしてこの流れが企業内研修にも及んできたのです。

eラーニングは誕生の頃から「いつでも・どこでも」を売りにしてました。教室で学習する従来の教育と違って、パソコンとネットがあれば、授業時間に関係なく、好きなところで学習できるというのです。

ただ、これ、本当でしょうか?

当時の環境でいうと、まずパソコンを開く必要があります。当時のパソコンを思い起こすと、電源を入れて起動し使えるようになるまで数分かかりました。その上場所も取りますし机の上に置いて、椅子に腰掛けて学習する必要があります。ノートパソコンでも重たい上に、バッテリー駆動時間が短くACアダプタを挿してないと不安でした。さらに、ネットワーク。有線LANケーブルを接続するか、無線LANの配備された環境で学習する必要がありました。

本当に、いつでも、どこでもか? といわれると、半分YESで半分NO・・・(今だから告白しますけど)小さく「・・・いいえ」と答えざるを得なかったのです。

その点をスマホはやすやすと超えてくれました。電源は常時ONになっていて、スリープを解除するだけで瞬時に使えます。机の上に置いて使う必要はなく片手で持って使えます。しかもネットワークを考える必要はなく、3G/4Gの回線を使うことでネットに接続することができます。

技術的には、スマホ対応はパソコン画面をスマホでも表示できるようにすることからスタートしました。大画面を前提としたパソコン画面を狭いスマホ画面に表示するので、ボタンサイズや表示文字サイズに無理があり、受講者にはご苦労をかけることもありました。

そこでスマホの比較的狭い画面で表示するための専用システムを組んで提供するスタイルが広がりました。ただPC版とスマホ版、双方を提供することは結構手間でした。

さらにFlashやアプリを使った教材はほぼ全滅で、スマホ用に移植する必要がありました。特にAppleがiOSでFlashを扱わないことが大きく、その後のAndroidでも特定バージョン以降Flash非対応となり、Flashは事実上終焉しました。

変わってメジャーになったコンテンツ形態は動画です。動画であればシステムの互換性をさほど考えることなく(動画のフォーマットの調整こそ必要ですが)、しかも制作も手軽ということもあって、一気にデファクトスタンダードになり現在に至ります。今やeラーニングのコンテンツというとほぼ動画に決まりつつあります。

システムの話に戻すと、その後、Webベースのシステムは「レスポンシブ・デザイン」の傾向になっています。パソコンでもスマホでも、それぞれの画面サイズに応じて適切に表示されるというもので、開発も一つに集中できますし、パソコン/スマホ双方を併用する「マルチデバイス」環境を提供するのにも有利です。

レスポンシブの例、それぞれの端末の画面サイズごとに表示が最適化されている

レスポンシブの例、それぞれの端末の画面サイズごとに表示が最適化されている

 

もう一つのスマホのシステムの傾向はアプリ化です。専用アプリとして提供することでログインの必要がなく、手軽に学習を行えたり、アプリならではの機能を提供できたりします。

さらにスマホのPush通知機能を使うことで、学習のお知らせや学習タイミングを適切に伝えることができます。学習のペースメーカーにもなりうるわけです。

 

こういったスマホの導入が学びにどういう影響を与えたかというと、最も大きなトピックが受講者層の拡大です。

これまでは机の上に置かれたパソコンで学習する必要があったのが、スマホは手元で学習できるので、真の意味でいつでもどこでも学習できます。これまでは不可能だった店舗教育や現場教育が比較的やりやすくなったのです。

現場で接遇マナーを教える、業務マニュアルを教える、新たに入ったアルバイトさんに適切に教育を行う。そういうことが可能になったのです。

特徴を整理すると、

  1. 現場のオペレーションを行う部門が主体となって
  2. 各業務に沿った独自教材(業務マニュアルなど)を制作して提供し
  3. 店舗や現場のスタッフが受講する

という感じでしょうか。

もう少し整理すると、従来、知識教育が中心だったものから、経験学習にも領域が広がってきたと言えるのではないでしょうか。

昨今我々が進めるVRを活用した学びや、AI英会話・AI中国語もその一環で、単に知識を教えるのに止まらず、実際の経験に準ずる体験をすることで、より実践に即した教育研修を行える環境が整いつつあります。

例えばVRでは、店舗でのクレーマー対応に適しています。例えば、「落ち着いて行動しましょう」と教材に書かれていても、実際のクレーマーを前にすると頭が真っ白になるでしょう。それがVRで実際を模擬したクレーマーが目の前でクレームを言うシチュエーションを経験することで、クレームの実感を抱くことができることでしょう。

AI英会話では、実際の会話をAIと行うことで、意味が通じるか、理解できるかと言うのを実際に試してみることもできます。

eラーニングの扱う領域が知識から経験に広がる・・・ これを我々はeXラーニングと呼称しています。

experience Learning、経験学習の造語で、弊社が考え出した言葉です。
(個人的にはextreme Learningと言うのもアリかとか思ってますが)

eXラーニング ・・・ 知識だけでなく経験を通してより印象的かつ効率的に学習を進め、業務成果に直結した学びの環境を提供する・・・ eラーニングのステージはこの段階にさしかかっています。

 

ここ数年間の企業内研修のトレンドで言っても、弊社ではファミレスさんやコンビニさんや宅配ピザ屋さんでモバイルを取り入れ、このeXラーニングの一端が見られます。

2017年10月27日に開催されるeラーニングアワードフォーラム内の無料セミナー『最旬テクノロジ×教育が今できること』 AI・ビッグデータ・VR・アプリ』でも、このeXラーニングについてご紹介する予定ですので、ご興味のある方はぜひお越しくださいませ。

 

今回はざっとeラーニングの歴史的な物を追って見ましたが、別のblogの記事『eラーニングの歴史をちょっと振り返ってみる』は、2011年の記事ですが、別の角度からまとめたものもありますので、よろしければご参考になさって見てください。今の観点からするとちょっと古いんですけど。

eXラーニング、これからの企業研修のトレンドとなりますかどうか。

 

P.S. ちなみに、このblogのタイトルはオードリ・ヘップバーンの主演映画にちなんでます。ええ(微笑)

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