アダプティブラーニングのイベント、Knewton Day Tokyo 2017 – Adaptive Learning Summit- に参加して来ました

By | 2017年3月30日

三月も終盤を迎え、いよいよ四月に入ります。

我が家の近所には靖国神社・千鳥ヶ淵と桜の名所があり、この時期になると大勢の花見客で賑わいます。昨晩、千鳥ヶ淵の横を通りかかるとライトアップが始まっていました。まだ満開ではなく人の流れもピーク時の1割程度でしたが、これから満開を迎えるにつれ、花見客は多くなることでしょう。

千鳥ヶ淵の桜(2017/3/29)

千鳥ヶ淵の桜(2017/3/29)

なお、千鳥ヶ淵は期間中、一方通行になります。九段下方面からイギリス大使館(半蔵門)方面のみしか歩行できませんのでご注意ください。さらに今年は靖国神社は境内改装中のため、例年のように座っての宴会はできませんのでご注意ください。

さて、弊社ともお付き合いの深いKnewtonさんが、Knewton Day Tokyo 2017 – Adaptive Learning Summit -を、昨日3月29日に開催しました。そちらに参加して来たので、その模様をレポートします。

このイベントを主催されたKnewtonさんは2008年に創業されたアメリカの企業で、アダプティブラーニング(適応型学習、以下アダプティブと書きます)の仕組みを出版社・大学・教育機関へ提供する教育テクノロジ企業です。アダプティブとは学習者の理解度や進捗に合わせ、自動的にその学習者に最適な問題や教材を提示するという機能です。アダプティブを適用することで、学習者それぞれに苦手/不得意な問題を個別に提示したり、次にやるべき学習内容を示唆することができます。

Knewtonさんはアダプティブの領域で本国アメリカはもちろん世界各国で数々の実績を築いてます。そして日本法人:ニュートンジャパンさんも設置され、日本国内でも大手出版社・教育会社さんを中心に活用が広がっております。詳しくは私がTechTargetに寄稿したこちらの記事をご覧ください。

当日は日本の代表である田中社長のご登壇はもちろん、ニューヨークよりKnewton Inc. CEOのライアン・プリチャードさんも来日され、EdTechのアニキことデジハリ大学院の佐藤昌宏先生とセッションを行ったり、Knewtonさんのサービスを導入された3企業が一堂に会し事例紹介を行ったり、最後のパネルディスカッションではKDDIの野本さんさんがモデレーターを務め、広尾学園の金子先生、中萬学院の木暮先生、聖徳学園の品田先生、袖ヶ浦高校の永野先生、堀井学園の堀井先生といった教育ICTの著名な方々がご登壇され学校・塾現場でのアダプティブラーニングについて語ったりと、まあ実に贅沢なイベントでした。

と、レポートしようと思ったのですが、当日はマスコミやライターの方も数多くいらっしゃり、おそらくこれから色々な記事として出てくるでしょうから、会全体の進行や内容についてここで説明することは割愛します。

そのかわり、eラーニングに携わる者として感じた感想のようなものを書いておこうと思います。

 

■Knewtonさんの3事例から見る、アダプティブ導入の背景

今回のイベントの目玉の一つは、Knewtonさんの日本での事例の紹介でしょう。ベネッセさん=ソフトバンクさんが擁するCassi株式会社さん、株式会社学研塾ホールディングスさん、株式会社Z会さんと、(はたから見ると)ライバルに思える3社がそれぞれKnewtonさんを導入した経緯や導入サービスの概要、メリットなどを説明しました。呉越同舟と言いますか、この3社さんが同じ場所で発表なさるのも、なかなかすごいです。

Classiさんのサービスでは、アダプティブの適用が教室内で先生が主導した授業を運営する中で成果をあげることにフォーカスされているのが興味深かったです。一旦、全員が同じテストを実施した後、その正誤を元にアダプティブにかけ、それぞれにあった問題や課題を提示するという考え方です。これはアダプティブ導入の一つの考え方ではあるとは思います。

学研さんのG-PAPILSは、個人に最適化された確認プリントで学習するという部分にアダプティブが適用されていますが、他にもポートフォリオ的な取り組みが印象的で、入学当初のレベルと設定された目標のデータと実際の進捗度合いから分析された結果に基づいてメンターと相談してカリキュラムを再設定するという仕組みが興味深いです。

Z会さんは、先行してAdaptieというTOEICのサービスをリリースしてますが、今回は今年春にリリースになるAsteriaを紹介されてました。無学年制を標榜する教育サービスで、だからこそ標準的な目次やコースではなく、学習者のレベルや進度に合わせるアダプティブの考え方が必要なのでしょう。

 

三者三様なアダプティブの使われ方をしているなぁというのが感想ですが、日本の初等・中等教育を支えるビッグネーム3社がそれぞれにアダプティブに着目し導入したというのが興味深いです。

教育活動を(やや乱暴ですが)分けると、教材と指導に分類されます。「教材」は紙の教材やプリントに始まり、それが動画や電子書籍などの形でデジタル化され配布されるようになってきてます。では「指導」は? となると、なかなか電子化できていなかった領域だったように思います。

アダプティブというのは、先生の指導ノウハウのうち、学習者の弱点を類推し、それぞれにあった指導を行うという行為をデジタル化(あるいは自動化)したものという捉え方ができます。

弊社のラーニングアナリティクスのサービスAnalytics+をリリースした際にも言及したことですが、教育ビッグデータやラーニングアナリティクスの結果生み出された分析結果やデータセットは、コンテンツに並ぶ教育資産になりうると思います。これまでカンや経験で積み上げてきたものが、実際の学習者の活動=データを根拠に、データドリブンに分析され蓄積される・・・ これは大いなる教育リソース、価値になりうるのではないでしょうか。

 

これは余談ですが、今回の事例紹介では3社さんが登壇されご説明なさいましたが、それぞれの提供されるサービスはもちろんなのですが、資料やご発表の内容に3社それぞれの企業カラーといいますか、キャラクタが滲み出ていました。各社さんがそういう持ち味、それぞれの企業文化というコアなものをちゃんとお持ちになっていることに、ちょっと感動しました。

 

■アダプティブの導入で学習時間は増える?

それぞれの学習者に最適な問題や教材が提供されるアダプティブの仕組みを導入すると、学習時間はどのようになるのでしょうか?

それを探る上で、Classiさんの実証実験結果が興味深いです。ClassiさんはKnewtonのアダプティブの仕組みを導入する際に実証実験を行っています。詳しくはこちらをご覧いただくとしてここでは結論だけをご説明すると、アダプティブ導入前と後で比較すると、導入によって学習時間は伸びています。

これはアダプティブが導入されることで学習者のレベルにあった「ちょうどいい」問題が出題されることで学習が面白くなり、つい勉強した、というのがClassiさんの分析です。ただし、本来アダプティブが浸透し広まると、むしろ学習時間が減るのではないかというのがClassiさんの挙げた予測でした。つまりアダプティブを適用することで、無理・無駄な学習をなくし、最適な学習を効率的に行うことができるようになり、結果学習時間は短くなる、という仮説です。

導入初期は学習時間は増えるけど、真にアダプティブが効果を発揮すると学習時間は減る ・・・ 果たしてどうなのか、しばらく見守りたいと思います。

 

■アダプティブは学習者の主体性を奪う?

これも興味深い議論で、アダプティブは適切な学習が自動で提示されるがゆえに、学習者の学習への主体性を奪うのではないか? という指摘もあります。確かに与えられた学習を無批判・自動的にやっておけば成果が出るのであれば主体性は失われる可能性はあるでしょう。これは昨今言われる「21世紀型スキル」とは逆行しているのではないか? という疑問です。

これに関しては可視化が一つのソリューションになるでしょう。これまでの学習結果が可視化されることで、目標に対してどの程度進んでいるかを俯瞰して見ることができ、モチベーションが喚起されることにつながります。

もう一点、これは(今回のイベントで語られたものというより)私の考えではありますが、その先の可能性、その学習者の可能性の候補を明示することで、従来は思っていなかった事に面白みを感じたり、自分の可能性を発見し、その新たに見出された可能性を探る活動をしやすくなるかもしれません。そういう当人は意図せぬ偶然の出会い=セレンディピティを起こすための仕組みというのも、アダプティブの先にあるようにも思っています。

多分、アダプティブは使い方によっては主体性を奪うでしょう。ただ、よく設計をされたアダプティブ〜答えの一つは可視化ですが〜を適用することで、主体性はむしろ上がるかもしれません。

 

■アダプティブ時代の先生の役割は?

アダプティブは、それぞれの学習者の理解度や進捗に合わせ、自動的にその学習者に最適な問題や教材を提示するという機能です。しかもこのアダプティブによる指導は経験豊富な先生が行うのと同等のものができる(あるいは控え目に、できるようになる)でしょう。

そういう情勢下でよく語られるのが、AIの発展によって仕事が奪われたりシンギュラリティの世界が訪れるんじゃないかというディストピアの未来予想です。

そこまでは飛躍しないとしても、実際に先生の役割が大きく変わる兆候は今すでに起きています。

例えば、特に塾で顕著ですが、これまでは黒板やホワイトボードで1対多のクラスルームで授業を行なっていたものが動画教材に置き換わりつつあります。さらにアダプティブの要素が加わることで、スケジュール設定やカリキュラムも自動的に(しかも適切に)行うことができるようになります。

そういう中で、「先生の役割というのは何だろう?」 というのが問われつつあります。

先生の活動は、ざっくりと分けると「教える」「励ます」「評価する」の3活動に分類されます。このうち「教える」「評価する」という活動は自動化されつつあります。そうなると先生に残された活動、「励ます」という部分の価値がぐんと高まるのではないでしょうか。こういう役割を「メンター」と言います。学習者のゴール設定をし、学習途中で中だるみしないようモチベーションを維持させる施策を打ったり、学習上の相談に乗ったり、そういう活動を通して学習者をゴールに導く役割です。

先生に求められるスキルはこの「メンター」という役割を中心に、再構築されるような予感がします。

 

 

さて、こうしてみてきたアダプティブ、ちょっと面白そうですよね?

弊社でもアダプティブの仕組みを取り入れておりますし、もちろんこのKnewtonさんの仕組みを導入することも支援いたします。ご興味ある方はどうぞ弊社までお問い合わせください。

 

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