早稲田大学との共同研究スタート:ラーニングアナリティクスによる退学予兆検出プロジェクト

By | 2015年4月15日

昨今、学習におけるデータマイニング(Data Mining)、ラーニングアナリティクス(Learning Analytics)など、eラーニングの世界でもビッグデータをどう扱うか? という議論が始まっています。

一歩先にAmazonやGoogleをはじめとするIT企業がビッグデータを取り扱ったサービス、たとえばAmazonでは閲覧・購入履歴などから「おすすめ」を表示したり、というのを以前より始めており、我々もその恩恵を受けているわけです。ユーザたちの履歴の巨大なデータから関連性を見出し、それを個々に適用することで次の需要予測をする、という感じでしょうか。

このAmazonの例は、いわゆる「レコメンド」(Recommend)とか「アダプティブ」(Adaptive)とか呼ばれるもので、教育の世界でいうと、「このテスト問題を間違えた人は、次にこの問題をやるといいですよ」と最適な問題を出題する適応型の学習を行うエンジンとしてすでに使われていたりします。

一方、弊社はこれまで多くのeラーニングの通信制大学をご一緒に立ち上げてきましたが、eラーニングの通信制大学というのは一般大学に比べて学生さんたちの行動を数多くログとして採取しています。実にビッグデータ的なのです。

入学前の検討時期から卒業までオンラインでやりとりした内容をすべて採取してます。どういうデータがあるかというと、たとえば・・・
一般の大学でも取得・管理している履修情報や成績情報、授業評価アンケートはもちろん、授業中のオンラインの出席状況・発言内容や、掲示板の書き込み履歴、レポートやテストの内容、ログインやサイト閲覧のアクセスログなどなど、多くの情報を採取しています。データ的に言うと、学生さんの挙動を細かく追いやすい環境と言えます。

これらデータを活用してなにかできないか・・・ 常々そう考えておりましたが、このたび早稲田大学と共同で、これら通信制大学のデータを解析し、利活用するためのプロジェクトを発足いたしました。

下記、今回のリリース内容です。

1000を超える学校・企業・スクール等のeラーニングシステムを立ち上げている、日本で初めてのeラーニング専門ソリューションベンダー、株式会社デジタル・ナレッジ(本社:東京、代表取締役:はが弘明)は、早稲田大学人間科学学術院 松居辰則研究室と共同で「ラーニングアナリティクスによる退学予兆検出プロジェクト」を発足、退学予兆を予見するための研究を行うこととなりました。デジタル・ナレッジは、同社が提供する学習履歴統合管理・認定証管理サービス『Mananda』により、学生のすべての学習行動を“見える化”し、退学予兆を予見するアルゴリズムを検証することで、効果的な学生指導を実現するサービスの開発・提供を目指します。

■共同研究プロジェクト発足の背景
昨今eラーニングの世界でLRS(Learning Record Store)による履歴の統合管理が提唱され、eラーニングはもとより電子教科書の世界でも先進的な事例が生まれつつあります。一方、これらLRSの厖大な学習履歴をどのように活用するかといった研究や製品が乏しい実情もあります。また、実際の教育現場ではeラーニング学習におけるドロップアウトが問題となっており、大学では定員充足率の確保や教育の質の担保、大学ブランドイメージの維持、収入減リスクの抑制などの観点において、退学者防止が重要な経営課題にもなっています。

■共同研究の目的
大手前大学、八洲学園大学といった、通信制大学の学生の活動履歴や学習履歴をもとに、退学予兆を予見できないかを研究しシステムとして実装することを目的として活動を行うものです。

■共同研究チーム
早稲田大学人間科学学術院 松居辰則研究室

■共同研究への協力校
大手前大学、八洲学園大学

■共同研究期間
2015年3月1日から2016年3月31日まで

 

八洲学園大学さん、大手前大学通信教育部さんといった通信制の大学さんのデータを利用しながら、退学につながるような関連性を見出し、アルゴリズム化することで、退学予兆を検知(この学生さんは先々退学しそうだとアラーティングする)できないか? というのを探るプロジェクトです。今まさにスタートして解析が行われております。

このアルゴリズムそのものに価値があるというだけではなく、この手法をより幅広く適用し、退学予兆以外の検知や分析を行っていくための第一弾となればいいと目論んでおります。

背景には弊社がリリースしておりますManandaがあります。ManandaはLRS(Learning Record Store)として様々なeラーニングシステムやその他アプリケーションから履歴を収集し格納しておりますが、この収集された履歴を活用する1つの手段として、今回行うラーニングアナリティクスの考えが適用できるのではないかと思ってます。

各eラーニングシステムやアプリから学習履歴・活動履歴がManandaに格納され、その格納されたデータを分析することで、教員が指導するのに必要な分析(退学予兆や弱点分析、先の進捗予測など)を行ったり、学習者自身が自らの学習を振り返ったり分析したりできるのではないか? と考えております。

その第一弾として、このたび早稲田大学と共同研究をスタートした次第です。これからの領域ですのでワクワクしております。

このたび共同研究を行っていただく松居 辰則教授は、早稲田大学人間科学学術院の先生で、知識情報科学、感性情報処理をご専門となさっています。とりわけ数値解析や人工知能を得意としており、今回の共同研究において、先生の知見をもとにご指導いただきたいと思っております。

 

実は(ここから個人的な話題になりますが)、松居先生は私の研究室の先輩でして、研究を指導いただいた方でもあります。

今から20年以上前の話、私は早稲田大学理工学部情報学科の寺田文行研究室に所属しておりました。寺田先生は数学の参考書「鉄則シリーズ」や数学のラジオ講座で有名な先生で、当時研究室に「知識処理班」という班がありました。いわゆるCAI、今のeラーニングの前身となるシステムを研究開発しておりました。
そういう意味では私は学生時代の研究内容がそのまま仕事になっちゃったレアなケースかもしれません。

研究室で私は「力学問題学習支援システム」というのを作っておりました。高校物理の力学の問題で、斜面に糸がくくりつけられれた台車があり、滑車の先にバネとオモリがあるというようなのがあるじゃないですか。
こういう問題文を出題し、その台車・滑車・バネ、オモリや、それぞれにかかる力をベクトルに分解する絵を描かせ、それぞれの数値や全体の数式を入力します。そこで推論システムを用いて、その学習者にどの知識がないのか、何を学ばせればいいのかというのを解析するというようなものでした。

この指導をしていただいたのが、松居さんでした。

非常に温和ながらもいうべきことはきっちりとおっしゃる方でした。面倒見が非常によく、落ちこぼれの私が卒業できたのも松居さんのおかげです(笑)

 

二十余年の歳月を経て、再び先輩のご指導をいただくのは何だか面白いものです。

ぜひ今回のプロジェクトで成果をあげ、次につなげていきたいと思っております。

 

(2015/10/28追記)

弊社のLearning Analyticsサービス「Analytics+」のRobotの一つとして、当産学連携プロジェクトで作り上げた「退学予兆検出エンジン」をリリースしました。詳しくはブログをご覧ください。

 

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